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 「……では、手と手を合わせて」
 「「「「「「いただきます」」」」」」

 声をそろえての挨拶が終わって、食卓を囲む和やかな夕食時。
 引越しのドタバタもどうにか終わった初めての週末。
 テーブルには色とりどりの料理が所狭しと並んでいた。

 「……今日のお料理は頑張ったの」
 「へへぇ、このトンカツはちょっと自信作なのよ」
 「食後には私が作ったケーキがあるからな。楽しみにしていてくれ」
 「あ、そのきんぴらはお母さんに作り方教えてもらったんですっ、どうですかっ?」
 「お、岡崎くん……その厚焼き玉子……美味しいですか?」

 そして繰り広げられる1VS多数のお料理自慢合戦。
 天国の母さん、俺は今日も頑張って生きてます。






























裏同棲っつーの 〜漢なら突っ走ってみようぜ編〜 第6between7話






























 「ご、ごちそうさま……げふっ」

 人体に必要な栄養素の悠に三倍近い量の夕食&デザートのケーキをなんとか平らげる。
 っていうか俺、この生活続けてたら確実に太りそうな気がする。なんか既に腹ちょっと出てきたような気がするし。
 いかんいかん、少し節制しないと。っていうかこれ食費も馬鹿にならない気がするし。
 ……でも今はちょっと休憩…………

 ぽふっ

 「……ん?」
 「「「あぁぁぁぁぁぁっ!?」」」
 「と、朋也?」

 あれ、ソファー(宝くじの余りで買った¥69800)に寝転がったはずなんだけど……何故かほのかにあったかくていい感じにや〜らかい感触が……(さわさわ)

 「こ、こらっ、何処を触っている!?」

 ん〜、それに凄い近くからなんかいい匂いがする……。つーか眠くなってきたなぁ……(ごろっ)

 「あ〜皆わりぃ、俺眠いからちょっと寝させてくれー……明日は昨日引越しで休んだ分仕事行かなきゃいけないからさ」

 どうにかそれだけを告げると俺はそのまま訪れ始めていた心地よいまどろみに身を委ね……






 ごすっ!!





 「がほぁっ!?」

 ……れることなくおでこに走った痛みで現実に意識を引き戻された。
 慌てて起き上がって周りを見ると、何やら杏が野球のピッチャー投球後のようなフォームの状態で物凄い形相をしながらこちらを見ている。
 しかも心なしか渚、ことみ、椋の3人も目線がとんがってるような……ってあれ?誰か1人足りないような……

 「全く乱暴な奴だな。朋也は疲れているのだ、大人しく休ませてやるのも良心というものではないのか?」
 「だからってなんでアンタの膝の上に寝転がってるのを黙って見てなきゃいけないのよっ!」
 「……へ?」

 えっと……どういうこと?

 「ぐす……智代ちゃん酷いの。朋也くん独り占めだったの」
 「なんかお2人とも幸せそうでしたっ、私たちなんかそっちのけでしたっ」
 「岡崎くん……酷いです」
 「え、え……?」

 なんだ、それは、つまり、ひょっとして……俺はソファに寝転がったつもりで智代を枕にしてたってことですか?

 「……あー道理で気持ちいいと思(びゅんっ!!)」
 ごっ!!

 一瞬の内に俺のすぐ脇を何か硬くて四角いものが通り過ぎる。
 慌てて振り返ると『ソレ』は見事にソファの背もたれに突き刺さっていた。
 ちなみに表紙には『月刊マ○ジン』と書かれている。…………ある意味辞書よりも強烈な攻撃力だと思うんだが(汗

 「朋也ー、なんか言った?」
 「イエ、ナニモイッテマセン」
 「ん、よろしい」

 杏は俺の片言の答えに満足(?)したらしく、意味ありげにニヤリと笑うと食器の片付けに入った。

 「……えっと、岡崎くん、大丈夫ですか……?」
 「あ、あぁ……多分」

 杏が台所に消えてもまだ半分硬直したままの俺を心配してか、藤林が声を掛けてくる。
 智代はさっきの膝枕が照れくさかったのかそれともまた余計な揉め事を起こしたくないのか(多分両方だと思うが)素知らぬふりで片付けに入っている。
 渚とことみもとりあえず片付けに入っているようだ。

 「あ……おでこ、ちょっと赤くなってますね。ちょっと待っててください」

 藤林はそう言うとそそくさと台所に入っていき、何か薄っぺらいものを取り出してきた。
 はて?救急箱は確かリビングに置くように決めたはずなんだけどな?
 それに氷とかならあんなに薄っぺらいはずはないし、なんだろう?

 「熱○まシートです。これ冷蔵庫に入れておくと効果UPするんですよ」
 「へぇ……そうなのか、知らなかった」
 「冷蔵庫に入れてた分ちょっと冷たいかもしれないですけど、我慢してくださいね」

 シートに貼られた薄いセロファンを剥がして、両端を軽く引っ張るように持ちながら俺の額にシートを貼り付ける。
 冷蔵庫に入れられていたシートは、確かに冷たかったが、それが却って心地よかった。

 「はい、これでいいです。多分なんともないと思いますけど念のためですから」
 「あぁ、サンキュ。藤林」
 「いえ、看護士志望ですし……それに、お姉ちゃんがやったことですから」

 あはは、と苦笑気味に笑う藤林。
 姉の失敗のフォローということなのだろうか。

 「……でも、お姉ちゃんを怒らないで上げてくださいね。坂上さんと仲良くしてたのにちょっと嫉妬しちゃっただけですから」
 「…確かにアレは軽率だったかもな。けど流石にやりすぎな気はするぞ……」
 「そんな事は無いと思いますよ?古河さんにことみちゃん……それに私だって少なからず嫉妬してましたから。正直ちょっとお姉ちゃんにお礼を言いたいくらいです」
 「……あー、えっと、その、なんだ……わりぃ」
 「なので岡崎くんには罰を受けてもらいます」
 「へ?」

 突然藤林が素っ頓狂な事を言い出す。

 「これからは私の事、『椋』って名前で呼んで下さい。後、私もこれからは朋也くんって呼ばせてもらいます」

 顔をちょっとだけ紅く染めて、はにかんだ笑いを見せながら藤林―――椋はそう言った。

 「……あぁ、わかった。手当てありがとな、椋」
 「はい、朋也くん」

 初めての名前での呼びかけに、椋は最高の笑顔で応えてくれた。






























 その夜。
 朋也はリビングのソファーベッドで眠っていた。
 ちなみに何故俺がそんなところで寝ているかというと、朋也たちが今回借りたマンションは6LDKという半端じゃない広さなのだが、部屋割りを考えたときにある問題が生じたからである。
 現在のこの家の住人は6人。部屋数は6(+LDK)一見丁度良い様に見えるが、実はコレ、意外と不味いのだ。
 まず、どの部屋に誰が割り振られるかで、朋也の部屋に近いか遠いかで争いが発生してしまう。
 6部屋あるとはいっても均等に割り振られているわけではなく、玄関のすぐ前にある部屋もあればお風呂場を挟んだ奥にある部屋もある。
 もし朋也が玄関前の部屋になったとして、誰かが最も離れたキッチン脇の部屋になんかなったりすれば、それはその子にとっては最悪の状況になる(らしい)。
 実際に朋也を何処の部屋にするかとその周りの部屋配置で、一度杏と智代とことみが本気の喧嘩になりかけた。
 暴力沙汰が怖いのもそうだが、何より目の前で争われるのも嫌だったので、丁度一番物持ちがない朋也が貧乏くじを引いてリビングで寝る事にしたのだ。
 まぁ当然の如く渚や椋、智代は反対してくれたのだが、朋也が折れる方が結局は解決への近道だと納得すると、なんとか引き下がってくれた。
 ちなみに現在の部屋割りは杏と智代が一緒の部屋(お互い抜け駆けしないようにという配慮?らしい)、ことみ、渚がそれぞれ単独部屋。椋は週末のみ宿泊なのだが、一応現在一部屋を貰っている(置いてあるのはほぼベッドだけなのだが)。
 最初は杏と智代が一緒の部屋ということでかなり心配だったのだが、意外にもうまくいっているらしい。
 何だかんだ言って気が合うのだろうか。
 とかく、そんな事情で朋也は今リビングで寝ているわけなのだが……。

 「朋也……寝てしまったか?」

 ソファーベッドに向かって掛けられる声。
 だが、肝心の朋也からの返事は無い。どうやらすっかり寝入ってしまっているようだ。
 カーテンの隙間から漏れる月の光でかすかに見える朋也の目は、確かに固く閉じられている。

 「……やはり眠ってしまったか。もうこんな時間だし仕方の無いことか」

 智代は予想通り、といった口調でひとりごちる。
 そのまま智代は少しの間黙っていたが、やがて小さな声で語り出した。

 「……さっきの夕食後の一幕は、きっとお前は考えなしで寝転んだだけだったんだろうが……私は嬉しかったぞ」
 「突然の事だったから驚きの方が先行してしまったけどな。結果として杏でもなく古河でも他の2人にでもなく、私が隣に居る時にあぁいう風になった、そんな偶然がたまらなく嬉しかった。……まぁ、皆の前だから少し恥ずかしかったのもあるにはあるが」
 「……だから、これは私からのお礼だ。遠慮せずに受け取ってくれ……」

 返答が無いと判りきってる相手に対して語り終えると、智代は膝を床につけて身をかがめる。
 雲が月を覆い隠し、リビングにも僅かな間の暗闇が訪れた瞬間、智代と朋也の顔のシルエットは軽く重なった。

 「……本当は口にしたかったんだが、それだとまた争いになってしまいそうだからな。だから、頬で我慢してくれ……」

 顔を離してから立ち上がり、最後にそう呟いて微笑むと、智代はリビングを後にした。



 同室である杏を起こさぬように、と静かにドアを開けて部屋に戻る。
 そのままそそくさとベッドに入り込んだところで、起きていたらしい杏が声を掛けてきた。

 「……見逃すのは今日だけだからね。……ちょっとアタシもやりすぎたと思うから」

 やはりというかなんというか。彼女は全てお見通しだったらしい。

 「……やはり貴女はいい人だな。私の今の行動も行き過ぎだったと自分で思うのだが」
 「だから、これでチャラ。明日からは、また遠慮しないからね」
 「あぁ、私もだ」
 「……おやすみ、智代」
 「……おやすみ、杏」

 外では星々が雲の切れ間から顔を覗かせていた、春も終わりに近づいた、ある一日の事。
 朋也と女性たちが、新たな暮らしを始めた直後の、週末の事。
 ―――そんな日の事。


後書き
同棲っつーのっぽく無い雰囲気で締めてしまいましたけど、たまにはこんなのもアリってことで。
つーかたまには違うテイストにしないと書いてる方が飽きちゃいます(ぉ
さて、このまま何も無ければ次回は有紀寧編?うわー、より収拾つかないってば(汗
今回のは完全オリジナル裏同棲なのでそこらへんを微妙に楽しんでもらえればよいかと。かと。
ちなみに智代と椋が目立ってるのは椋好きの作者と智代好きのあんぱんさんの仕業です。趣味趣味(ぅゎ





一言感想とかどうぞ。感想はすごく励みになりますので執筆する気が出てきます