※裏4話+同棲(どうせい)っつーの第6話の朋也が目覚めてからのIFです
修羅場。
それは血みどろの激しい戦いや争いの行われる場所。
しゅらじょうとも呼ばれ、人形浄瑠璃・歌舞伎・講談などで、激しい戦いや争いの演じられる場面ということにも使われる(一ノ瀬ことみ談)。
さて、諸兄は恐らくこう思っているだろう。曰く、何故そんな説明が出てきているのかと。
答えは至極簡単。
「「「「「…………朋也(岡崎)(くん)」」」」」
俺は今、五人の女性から囲まれている。
しかも全員が全員俺に対して厳しい視線を向けている。
多分、ここで判断を誤ったら……ほぼ間違いなく俺は命を落とすだろう。
というか、むしろ俺としては正解の選択肢を教えて欲しいくらいなんだが(泣
あぁもう、まだタイトルコールすらしてないけどあえて言わせてくれ。
こんなの、どうせいっつーの!!
同棲っつーの 〜漢なら突っ走ろうぜ編〜 裏6話
おおお落ち着け俺っ。まずはなんでこのような地獄絵図に陥ったのかを反芻するんだ。
事の発端はそもそも渚までもが俺のアパートで(半分無理やりに)同棲する破目になった事に起因する。
いや、それ以前に可愛い女の子2人と同棲っていう時点で危険だったんだけど。
ともあれ。渚までもが同棲するようになって、俺のアパートはまさに混沌と化した。
今まではとりあえず朝ごはんが出来るまでは眠る事も出来たのだが、現在の俺の寝床は台所の為、朝食の準備の為毎朝強制的に起こされる。
当然普段より睡眠時間も減るわけで、その影響はすぐに仕事に現れた。
一般に睡眠時間が減ると体力の非完全回復、そしてそれにに伴う集中力の低下、注意力の散漫が起こる。
ひらたくいえば眠くなって作業に集中できないってことなんだけど。つまりは眠くて作業に集中できずに怒られたと。
そんなこんなで一週間をようやく乗り切った週末、俺は1人でゆっくり出来る場所を探し、よりにもよって市立図書館に逃げたのだった。
そしてそこで現在の同棲生活を嘆いていると何故かことみと再会。
ほぼなし崩し的に家に遊びに来るのが確定してしまう。しかも同棲の事は秘密にした状態で。
これは不味いと思案しつつも妙案が何も浮かばなかった矢先、もう自棄だと言わんばかりに豪快にドアを開けると、目の前には藤林の姿があった。
んで、何かを勘違いした智代と杏(まぁ大方の予想はつくが)を筆頭に現在吊るしあげを喰らう直前、と……。
……っつーか何コレ。なんていうかあんまりじゃないっすかコレ。
なんつーか、マジで色々と勘弁してください偶然の神様(泣
「さて、朋也。出来ればこの状況を説明して欲しいのだが」
「賛成。椋が来たのはともかくとしてなんでことみが来てるのかしらね?」
「いや、それはだな、その、説明すれば長いというかなんというか」
「あ、そういえばことみちゃんお久しぶりですね。こんにちはです。お元気でしたか?」
「渚ちゃんこんにちわなの。とっても元気だったの」
「というかむしろ私はなんでお姉ちゃんが此処に岡崎くんと一緒に・・・その、住んでいるのかが気になります」
「それはね、椋。朋也が私と同棲することを望んだかr「嘘をつくな淫乱女。それにそもそも朋也と同棲し始めたのはこの私だ」」
「誰が淫乱女よ失礼ね!」
「私は実家のお手伝いをしてたんですけどことみちゃんは今どうしてるんですか?」
「お、お姉ちゃん落ち着いて・・・。じゃあどうして坂上さんは・・・その、同棲を?」
「簡単な話だ。私は他の誰よりも朋也を愛しているからだ。」
「アンタなんかよりあたしの方が愛してるにきまってんでしょ」
「なんだと…っ」
「ふ、2人とも落ち着いて……な?」
「私は近くの大学に行ってるの。本当はアメリカのすごい大学に行く予定だったんだけど朋也くんの傍に居たくてこっちの大学を選んだの」
「「「「「はい?」」」」」
ずっと続くかと思われていた混沌的な会話がことみの爆弾発言によって一瞬にして凍りつく。
…え、今、コイツ、何て、言った?
「……それはライバル宣言、ということでいいのだな?一ノ瀬『センパイ』」
「……薄々はわかってたけど、やっぱりか……また手ごわいライバルの登場ね」
いち早く体の自由を取り戻したらしい2人(当然、智代と杏)は新たなライバル出現に早くも闘志を剥き出しにしている。
傍から見てるとすげー怖い。
「……朋也くんモテモテですっ、自信なくなっちゃいそうですっ」
「……朋也くん、モテモテなの?」
「…………(あぅあぅ)」
片や渚はまたも自己卑下モードに突入しているしことみはちょっと泣きそうな表情で俺を窺っている。う、ちょっと可愛い…ってそうじゃなくてっ。
んでもって藤林はことみの爆弾発言が原因なのかそれとも四つ巴に驚いたのか(多分両方だろうが)びっくりした表情のままで固まり続けている。
そして俺はそんな皆を観察しつつもこの状況を抜け出る策が全く思い浮かばない為固まったフリを続けているのだが……。
「あぁ、モテモテだ。少なくともこれで4人から求愛されていることになるな」
「あたし、智代、渚、ことみ……確かにね。しかもその内3人と同棲してるし……なんかよくよく考えると腹立ってくるわね」
「皆さんとっても可愛いので私に勝ち目なさそうですっ、私ぴんちですっ」
「同棲…皆朋也くんと同棲してるの?」
「……(あぅあぅ)」
「あぁ、ちなみに私が一番最初に一緒に住み始めたんだがな」
「まさか一番最初に同棲始めたから自分が彼女だとか言わないわよねぇ智代?あ、ちなみにあたしが2番目ね?愛は一番だけど♪」
「私は出遅れてしまったので3番目ですっ」
「……(あぅ)」
「……みんな積極的なの」
瞬間、ことみの眼に何かを決意したかのような光が宿る。
―――――ヤバイ!
「じゃあ私も一緒に住m「言っとくがもう完全にキャパ超えてるから無理だからなっ!?」」
あ、あっぶねー!!
やな予感はしたけどやっぱりブルータスことみお前もかっ!?
「ぐす……朋也くん、ことみのこと、嫌い?」
思わずギリギリのタイミングでことみの発言を防いだ俺に、ことみは更なる攻撃を仕掛けてきた!
どうする?
たたかう
にげる
まほう
道具
→惑う
懐柔される
ネタに走る
敗北宣言
「あ、いや、嫌いとかそういうのじゃなくてだな、その、な?」
「じゃあ、好き?」
「あ、いや、その、えっと……」
「………………(じーーーーー)」
「………………(じーーーーー)」
「………………(じーーーーー)」
「………………」
朋也は周りからの視線にすくみあがった!
「や、なんていうかどっちにしろだな?もうこの部屋には人を新しく住まわせる余裕なんか無……」
PILLL PILLL
その時、奇跡が起きた。
ありがたい事に普段は全く鳴る筈の無い電話が鳴ったのだ。
助かったとばかりにその場から逃れるようにして受話器を上げる。
「はい、もしもし!」
『もしもし、岡崎さんのお宅でしょうか?私、蔵等警察蔵等駅前交番の古江と申しますが』
「はい、岡崎は私ですが……?」
なんと、電話の主は警察だった。
あれ?俺なんか悪い事したっけ?(汗
す、少なくとも警察のお世話になるようなやましい事は一切無かったはず…だよな?
『以前に岡崎さんがうちの交番に届けられましたモノなんですが、半年を過ぎましても落とし主が現れなかったのでもしよろしければ受け取りに来て頂けますか?』
「……へ?えっと、俺、何か届けましたっけ?」
「あれ、憶えてらっしゃいませんか?宝くじお届けになられたじゃないですか」
あ、そういえば。
いつだったかたまたま道で10枚綴りの宝くじを拾ったんだっけ。
んで何を血迷ったのかそのまま捨てればいいものをたまたま交番が見えたからって届けたんだよな、うんうん。
「あーそういえば……でもどうせ外れくじでしょう?今更貰っても……」
『いえ、それがですね。一応調べてみたところ、この10枚綴りの中の一枚が3等の200万に当選してるんですよ』
「…………はい?」
『ですから、当選してるんですよ。3等に。で、このくじの交換期限が来月末までなんですよ。ですから早めに来て貰ったほうがよいかと思いまして』
「………………マジですかっ!?」
おぉぉぉぉぉ!すげぇ!すげぇぞ!!
人間何処でいい事をしとくかわかったもんじゃないな!(半分意味不明
こうなればもう世界の全ては俺のものだぜ!(意味不明
「わ、わかりました!今から受け取りにいきます!」
『はい、わかりました。では念の為身分証明出来る物を何かお持ちになってください。手続きが済めば渡しますので』
「身分証明証ですね!わ、わわわかりました!でで、では失礼しします!!!」
がちゃんっ!つーっ、つーっ、つーっ……
電話を切ると同時に素早く身支度を整え、外出用の薄手のジャケットを羽織る。
その余りに素早く且つ意外な動作に、皆は唖然としていた。
「と、朋也……どうしたの?」
ようやく、といった感じで杏が問いかけてくる。
「どうしたもこうしたもない!警察が3等で落とし主が居なくて棚ボタなんだ!!」
「……朋也、すまんが言っている意味が全く持って判らないのだが」
俺の言葉についていけなかったらしい智代が小さく返す。
くそっ、急いで行きたいってのに……。
けど、俺はこの時点で気付くべきだったんだ。
偶然の神様は俺にいい目を出してくれるはずがなかったんだってことに。
「あぁもう!だから俺がずっと前に届けた宝くじが実は当たりくじでしかも落とし主が現れないから引取りに来てくれって言われたんだよ!しかも200万だぞ!?」
「「「「「?!!」」」」」
「ちょっ、朋也…それ、本当?」
「あぁそうだよ!だから早く行かないと不味いだろ!?」
そう言って靴を履こうとする。だが、気ばかり急いているためだろうか、中々履く事が出来ない。
きゅぴぃぃぃぃぃぃぃぃん!!!!
ぞくぞくっ!?
瞬間、何故だか判らないがとてつもなく嫌な予感がした。
なんていうか、もう俺の時代は終わったとかそんな感じの。
「だったらそのお金でもっと広いところに引っ越せばいいの。そうすればことみも朋也くんと同棲出来るの」
「それなら私の通ってる看護学校の寮のすぐ近くに家賃は16万くらいするけど6LDKの凄く広いマンションがあるのでそこがいいと思います。っていうかもう今から連絡して部屋とっておいてもらいますね!!ちなみにそのマンションはペットもOKなのでボタンも大丈夫です!!」
「なにぃぃぃぃぃぃぃぃ!??!」
まさに晴天の霹靂。
俺すらまだ使い道を思いついていなかった大金の使い道が確定。
っていうか、驚いてばっかりで全く動きの無かった藤林がそう出てくるとは正直思わなかった……。
「あ、もしもし、○○不動産さんですか?××番地のマンションなんですけど……」
しかももう電話しちゃってるし。いや、早いですっておねーさん。いや、藤林は妹の方だけど。
「よかったわねー朋也。これで台所での生活からおさらばよ」
「しかも今度は1人ずつ部屋が持てそうだ。何よりだな。なに、心配するな。16万の家賃なら全員で分担すればどうにかなるだろう」
「広いところにお引越しですっ、お料理ももっと頑張れそうですっ」
「これで私も一緒に住めるの。とっても嬉しいの」
「これで私も勝負の舞台に立てます。お姉ちゃん達には絶対負けません!」
あ、しかもなんか知らない間に藤林まで参戦してくることになったっぽい。
ちょ、待って……勘弁して……
そんな俺の心の叫びは誰にも届くはずも無く、俺は皆の監視の下、交番にくじを取りに行かされる事になった。
数日後、無事現金との引き換えを終えた俺たちはそのままマンション契約も終わらせ、ほぼ強制的に引っ越す事となった。
ともかくこれで智代、杏、渚に続いてことみとの同棲も始まってしまうらしい。
ちなみに藤林は寮の関係で最低でも一学期一杯は寮に居なければならないらしいのでそれまでは
『お姉ちゃんたちが暴走しないように私が通い妻になります!』
とか言ってきたので、とりあえず毎日様子を見に来る上週末はこのマンションで寝泊りするらしい。
……あの、偶然の神様、これ、本気で……どうせいっつーの?(涙
へ、平穏を……俺の平凡な日常を返してくれーーーーーーーーーっ!!!
(続く)
本編作者のあとがき
この外伝シリーズはしまさんに書いてもらった作品です。俺としても「このシリーズは別展開があってもおもしろいよなあ」とか思ってたんでこういうのいただけてものすごく嬉しいなあと。
本編やこの外伝を読んで「俺だったらこんな風にするなあ」とかありましたら是非書いて送ってください。俺が悶えます(ぉ
一言感想とかどうぞ。感想はすごく励みになりますので執筆する気が出てきます