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「はあ……」

 一時間目の授業を終え、僕は溜息をついた。三年に進学してから早数ヶ月、変化した生活にも慣れた頃だが、疲れが取れない。寮会の仕事の所為か、最近白熱してるバトルランキングの所為だろうか。
 ふと隣を見ると、三年進学時に転入してきた朱鷺戸さん、僕にとっては十年以上の歳月を経て再会した幼馴染のあやちゃんがいる。シャープペンシルのノックカバーをはずし、消しゴムをかけていた。

「あれ、あやちゃん」

 訝しんで声を掛けると、あやちゃんはババッ、と腕でノートを隠す。腕で覆われる前にちらっと見えたけど、なんだか線が消しきれずに広がったような跡が、そこかしこにあった。

「り、理樹くん? 何かしら」
「うんと……もしかして、消しゴム忘れた? もしそうなら、消しゴム半分あげるけど」
「え、あ、ありがと……」

 予想は当たっていたようだ。消しゴムを定規で分割し、半分をあやちゃんに握らせる。

「すっごく、嬉しい。理樹くん、これ一生の宝物にするからね。ケースの中に入れて、大事に保管しておくからっ」
「いやいやいや、普通に使ってよっ」

 予想以上に喜ばれてそんなつっこみを入れた時、何か強い視線を感じた気がして、辺りを見回す。しかし、視線がぶつかることはなかった。気のせいかと思い直し、次の授業に備える。
 そして二時間目の授業も、チャイムと同時につつがなく終了した。

「直枝。ボールペンを持っているかしら? あれば貸して欲しいのだけど」

 それからすぐに僕に声を掛けてきたのは、女子寮の寮長を勤めるクラスメイト、二木佳奈多さんだ。僕が男子寮の寮長であるため、最近は何かと話す機会も多い。

「うん。あるよ。どうぞ」

 ちなみにこのボールペンは、購買で買ったやつだ。使い始めてから三ヶ月ほど経過しているため、インクが結構減っていたり、滑り止めの部分が少し傷んでいたりするけど、まだまだ現役で使える。

「助かるわ」

 二木さんは落とさないようにとの配慮なのか、ボールペンごと僕の手をしっかりと包み込んだ。

「わっ」
「どうかした?」
「ううん、何でも……」

 本当は、きめ細やかな肌の感触に包まれるのがちょっと予想外だったので、びっくりしたんだけど。そんなことを言ったら、なんて返されるのかわからないので、黙っておく。

「フフ……すぐに返すから」

 意味深にも見える笑みを浮かべ、二木さんは席に戻ると、僕の貸したボールペンを滑らせ始めた。

「直枝さん、少しよろしいかしら」

 そこで、クラスメイトであり、リトルバスターズのメンバーでもある笹瀬川佐々美さんが声を掛けてきた。

「そのシャープペンシル、ずいぶん大事に使っていますわね。何か、思い入れでもあるのかしら」

 僕がさっきまで持っていたシャープペンシルを指差す。

「これはね、恭介にもらったものなんだ」

 大事に使っている、という言葉が嬉しくて、つい相好が崩れる。

「僕が一年の時にさ、今まで使ってたのが壊れたから買い換えようと思ってたら、使いやすい種類だって言ってプレゼントしてくれたんだよ。だから、このシャープペンシルはちょっと大事にしてるかな」
「そう、なのですか。それは、いいお話ですわね……」

 ちなみに、この話はついつい僕が話してしまうことが多いので、リトルバスターズ内では広く認知されている。

「直枝。これ返すわ」
「あ、使い終わったんだ。ん、あれ?」

 そこで二木さんから声がかかり、ボールペンを受け取る。しかし、心なしか新しくなっているような気がする。インクも多く、滑り止めの部分も新品同様で、まるでついさっき買ってきたかのような。

「あの、二木さん」
「何?」

 いつものように、そっけないとも言える返事。更に今は、こちらのほうから視線までそらしている。

「このボールペン、別のじゃない? なんか、新品みたいになってるんだけど」
「……気のせいよ」
「いや、でもインクとかここのゴムの部分とかさ……」
「何か不都合があるなら、弁償するけれど?」

 試しにノートにペンを走らせて見るが、インクは問題なく出た。

「ううん、大丈夫」
「そう」

 釈然としない気持ちながらも、既に僕には二木さんを引き止める言葉はなかった。

「あ、それで笹瀬川さん。シャープペンシルの話だっけ?」
「ええ、そのシャープペンシル……の芯を、いただけるかしら? 切らしてしまいましたの」
「そうなんだ。HBだけど、かまわないかな」
「問題ありませんわ……はぁ」

 よく分からないが、笹瀬川さんは元気がないみたいだ。

「あら?」

 僕がシャープペンシルの芯が入ったケースを取り出し、芯を取り出そうとして、それよりもケースごと渡すべきだと思い直したところで、笹瀬川さんが声を上げる。

「あなた、少し髪が乱れていますわよ」

 笹瀬川さんの手が、僕の髪を梳る。途端、ああっ、と驚きと非難が混じったような声が上がった。何かあったのかなと思いつつも、こっちはそれどころじゃない。
 うわ、なんだろうこれ。笹瀬川さんの細い指が僕の髪をすり抜けていく感触。なんだか、すごくくすぐったくて、恥ずかしい。

「そういえば、以前髪を整えたこともありましたけれど……あなた、男性とは思えないくらい、きれいな髪質をしていますのね。さらさらして、手触りもいいですし」
「あ、あのっ。笹瀬川さん?」
「あら、何か……わ、わたくしとしたことが」

 僕が名前を呼ぶと、それで我を取り戻したのか、笹瀬川さんが僕の頭から手を離す。そして、口元に手を当てて、赤くなった顔で一つ咳をした。ちなみによく見ると、笹瀬川さんの指には、梳いている間に抜けたであろう、僕の髪の毛が数本挟まれている。

「ちょっと、笹瀬川さん。こんな公衆の面前でそんなことをするのは、看過出来ないわね」

 そこで、先程立ち去ったと思っていた二木さんがやってくる。

「い、今のは少々身だしなみを整えて差し上げただけですわ。ですけど……公衆の面前ということは、人目のないところならかまわないんですの?」
「揚げ足を取らないで欲しいわね。そういう問題ではないでしょう」
「そうよ、ずるいっ。自分ばっかり」

 何故か、あやちゃんまで声を大きくして言った。

「何を言っているのかしら。あなたがたは、きちんと欲しいものを手に入れたのでしょう?」
「あたしを二木さんと一緒にしないでよっ。あたしはちゃんと理樹くんの善意からの贈り物なんだから、二人みたいに取ってないのっ。それに、笹瀬川さんが今持ってるものじゃ、いくらなんでもレートが違いすぎるじゃないっ」
「……朱鷺戸あや。あなた、少し黙っててもらえないかしら」
「ま、まあまあまあ、三人とも落ち着いてよ」

 少し余裕のある笹瀬川さん、興奮するあやちゃん、頭痛を堪えるような二木さん。それぞれを何とかなだめようとする。

「大体、いくら直枝の髪がきれいだからってっ」
「わっ」

 身振り手振りの激しくなっていた二木さんの手が、ちょうど僕の頭に触れ、その上で止まる。

「本当にさらさら、ね……」
「あっ、それならあたしも!」

 二木さんの呆けた様な発言に素早く反応し、あやちゃんが僕の横に滑り込んできて頭に手を添える。

「わ、わ、わー。理樹くんの髪だぁ。やわらかぁい……」
「お、お待ちなさいあなたがた。わたくしもまだ堪能していませんのよ」

「いやいやいや、なんでこうなるのさっ」

   ◇   ◇   ◇

「はあ……」
「どした、理樹? なんか悩み事か?」
「ん、いや、なんでもないよ」

 クラスメイトの女子三人に頭を振り回されてから数日後。部屋で思わず溜息をつくと、腹筋をしている真人が、続けながらも心配げに声を掛けてくるという割と器用なことをして見せた。

「そうか? ならいいけどよ。筋肉が必要なら、いつでも言ってくれ」
「気持ちだけ受け取っておくよ」

 真人に対して一応感謝を示しつつ、溜息の原因を思い浮かべる。色々と疲れる理由はあるけれど、今真っ先に思い浮かぶのは、あやちゃん、二木さん、笹瀬川さんのことだ。
 なんと表現するのが適当かはわからないのだが、最近の彼女たちは少々様子がおかしいような気がする。
 例えば先日の放課後、僕は笹瀬川さんと一緒に野球の練習をしていた。笹瀬川さんに、僕のバッティングフォームを見てもらっていたのだ。
 笹瀬川さんが用意してくれたビデオでフォームを確認しながら練習し、一息つこうと休憩したところ、タイミングよくあやちゃんと二木さんがやってきて、ドリンクやタオルを手渡してくれた。
 あやちゃんは少し前から練習の様子を観察していて、二木さんは見回りついでに気にしていてくれたということだったんだけど、応援してくれているようなので、それは素直に嬉しかった。
 けれど、よく分からないことがあって、あやちゃんは僕の飲みかけのペットボトルを、二木さんは僕が汗を拭いたタオルを、何故かそのまま持って行ってしまった。立ち去る前にはなにやら笹瀬川さんに抗議していたみたいだけど、ダビングがどうとかいった途端、二人ともおとなしくなったし。
 また、別の日にこんなこともあった。
 臨時に午後休校になった日に、たまたまやってきたあやちゃんと話ながら寮会の仕事で花壇の片づけをしていたんだけど、誤って指を切ってしまった。
 そして……あー、誰に聞かせてるわけでもないのに照れるのも何なんだけど、とにかくあやちゃんに応急処置をしてもらって、保健室に行った。途中で、何故かランニング中だった笹瀬川さんもついてきた。
 けど保健室の先生は居らず、二木さんに来てもらった。二木さんは保健室で仮眠を取ることが多く、保健室の様子に詳しいと以前に聞いていたためだ。
 二木さんに治療をしてもらったのだけど、応急処置のために指に巻いてもらっていたあやちゃんのハンカチには血が付いていた。新しいのを買って返すから古いほうを捨ててもらおうとしたらすごく真面目な声で拒否されたのは、一体なんだったのだろう。
 その後二木さんが有無を言わせず爪を切ってくれたり、部屋まで付いてきた笹瀬川さんがベッドメイクをしてくれたり、同じく部屋まで付いてきたあやちゃんが次の日のためのワイシャツを整えてくれたりといったことがあった。
 なんだか……シーツとかワイシャツとかが、やけに新品みたいだったのが気になるけど。
 とにかく三人とも色々と世話を焼いてくれるんだけど、やけに頑固になる瞬間があるというか、どうにも行動とか考えていることがよく分からない。

「理樹、いるか?」
「あれ、謙吾?」

 ドアが開くと共に、剣道着をまとった幼馴染が部屋の中に入ってくる。

「どした謙吾っち。困ったような顔して、腹でも減ったのか?」
「空腹で理樹を訪ねてくるわけがないだろう。と、そんなことはどうでもいい。理樹、洗濯機が故障しているぞ」
「え、動かないの?」
「ああ。直接見たほうが早いだろう」

 謙吾が先導し、少々小走りで洗濯場まで移動する。

「この通り、電源が入らない状態だ」
「うん……これは困ったね」

 洗濯機は、スイッチを入れたところで反応しない。元の電力は確保してあるので、謙吾の言うとおり洗濯機の故障ということなのだろう。

「どうすんだ、理樹。これじゃ汗かいても着替えが出来ねえぜ」
「うーん、修理の手配も必要だけど、その間の代替手段も用意しないといけないね。あと管理人さんへの報告と告知と……」
「大変だな。何か手伝えるか?」
「あ、じゃあ洗濯機故障中の張り紙頼めるかな。僕はちょっと、二木さんに応援をお願いしてくるから」
「了解した」
「任せとけ」

 謙吾と真人の二人をその場に残し、二木さんに電話をかける。
 しかし、コール音こそ鳴るもののつながらない。12を数えたところで僕は電話を諦め、女子寮へと足を向けた。
 ほどなく、僕は女子寮の前に到着する。
 しかし、緊急事態ではあるものの、女子寮に無断ではいるわけにもいかない。誰か見知った人に取り次いでもらおうかと思った矢先、タイミングよくクラスメイトの杉並さんの姿が見えた。

「杉並さん。ちょっとだけいいかな」
「な、直枝君っ!? えあ、ど、どうしよ……ううん、全然いいよ、すっごくいいよ。な、何?」

 よく分からないけど、杉並さんはすごく慌てていた。まずいときに声を掛けてしまったのだろうか。
 けれど、こちらも急ぎなので、好意に甘えさせてもらう。

「二木佳奈多さんに、寮会の件で相談があったんだけど、連絡が付かなくて。悪いけど、もし部屋にいたら呼んで来て貰えないかな」
「う、うん。それは別にかまわないけど。もし急ぎだったら、直接行った方が早いよ」
「いや、そういうわけにもいかないでしょ」
「え、だって、直枝君は女子寮にはいるの許可受けてるんでしょ? 掲示板に書いてあったよ」
「初耳なんだけど」

 相談事が一つ増えてしまったらしい。とはいえ、直接部屋を訪ねることが出来るのなら都合がいい。

「わかった。じゃあ、直接いってみることにするよ」
「う、うん……あ、ちょっと待って」

 杉並さんは、僕を呼び止めると肩に手を伸ばしてきた。

「い、糸くず付いてたから」
「あ、そうなんだ。ありがとう」

 僕がお礼を言うと、杉並さんは真っ赤になって、こくこくうなずいた。
 ……きっと、異性に免疫ないんだろうなあ。来ヶ谷さんあたりが見たら喜びそうだ。
 杉並さんに挨拶をして、女子寮の中へ入っていく。許可が出ているのは本当らしく、僕の姿を見ても咎める様な声はあがらなかった。
 二木さんの部屋はクドの同室なので、何度か来たことがある。そのため迷うことなくたどり着いた。扉をたたきながら、内部に声を掛ける。

「二木さん? 直枝だけど、ちょっといいかな」
『直枝のものなら、もうなんでもありね』
「? 入るね?」

 返事が少し妙だった気がするけど、大丈夫だろう。

「……あれ?」

 扉を開けると、そこには二木さんのほかに、あやちゃんと笹瀬川さんも居た。さらに、彼女たちの周りには妙に見覚えがあるような気がする品々があった。
 例えば、あのボールペン。購買部で売っているタイプだけど、あの使い込んだ感じは僕のだと思う。あやちゃんの近くにおいてあるケースに入っているのは、間違いなく僕が半分あげた消しゴムだろうし、ビデオで再生されているのは僕の素振り姿だ。二木さん持っているタオルは、その時に汗を拭いてもらったものだった気がする。あやちゃんの持っているハンカチは、怪我したときに巻いて貰ったものに見える。置いてあるワイシャツや笹瀬川さんの手にあるシーツも、僕が使っていたやつではないだろうか。あと、ペットボトルもあるけど、さすがに確証はない。
 他にも、爪とか髪の毛なんかがクリアケースに入れられ、僕の名前と日付入りラベルが貼られてる。

「な、直枝……?」
「あら、どうしましたの……な、直枝さんっ?」
「え、何、理樹くん!?」

 戸惑う二木さん、笹瀬川さん、あやちゃん。僕はそれ以上に戸惑いながら、尋ねる。

「それ、僕のだよね……?」

 それのところで、漠然とそれらを指した。

「ち、ちがっ、これは違くて、別に理樹くんのとかそういうんじゃなくて」
「な、なな何を言っているのかしら? さっぱりわからないわ」
「そう、そうですわよ。そんなことがあるはずありませんし、まったくですわっ」
「みんな無茶苦茶あわててるよねっ」

 特に、笹瀬川さんなんか日本語になってないし。

「なんかおかしいなと思ってたんだよ。最近色々な物が入れ替わってるような感じだったし、みんなの様子もおかしかったし。いったい何なの?」
「べ、別に……ちょっとうっかりして、直枝のと取り違えただけよ」
「いやいやいや、無茶苦茶だから」
「それよりも直枝。いくら女子寮に出入り自由といっても、ノックもなしに女性の部屋を開けるのはどうかしら」
「ちゃんとノックしたよっ。直枝だけど入っていいかって確認したら、二木さんが直枝って言ったあとに許可したんじゃないか」
「あら、もしかして先程の二木さんの発言ですの?」
「どどど、どうしてくれるのよ、二木さん」
「あなたたちだって、全然気付いてなかったじゃないのっ」
「う……そうよね。ノックして、名乗って、入室確認までしたって言うのに、まったく、これぽっちも、全然気付いていなかったのよね。いくらなんでもそこまで気付かないとかありえないわよね」
「それも三人そろっていて、誰一人気付かなかったわね」
「しかも直枝さんにばれてしまいましたわね。無様にもほどがありますわ」
「滑稽ね、滑稽だわ。ふふふ、笑えばいいのよ。この哀れな姿を笑っちゃいなさいよ。思いっきり、笑い飛ばしなさいよ」
「フフ……」
「あーっはっはっはっはっ」
「おーっほっほっほっほっ」
「さすがに怖いよっ!」

 あやちゃん一人の自虐笑いなら何度か見たことがあるから慣れてるけど、笹瀬川さんや二木さんまでそれに加わると、ものすごく異常な光景だった。しかも、全員笑い終えたあと落ち込んで、それぞれぶつぶつ言ってるし。

「え、ええと、三人とも元気出してよ。別にそんな、本気で怒ったりしてるわけじゃないし」
「そ、それは本当ですの?」
「うん。本当だよ」
「よ、よかったー。理樹くんに、変な子だと思われたらどうしようかと思った」

 うん、そう思うなら、せめて僕の血が染み付いたハンカチを握り締めるのは止めて欲しいんだ、あやちゃん。

「けどさ、やっぱり勝手に取り替えられちゃったりするのは、ちょっと嫌だからさ。そういうのは止めて欲しい」
「それは……ええ、そうね。悪かったわ」
「う……ごめんなさい」
「そうですわね。それについては、申し訳なかったですわ」
「わかってもらえて嬉しいよ」

 反省してくれたようで、ほっとする。これで、ようやく落ち着いて――

「わふー。ばとるでリキの膨らませた風船、げっとしましたっ」
「おねーちゃん、見て見てー。鈴ちゃんの持ってた理樹くんの小さいころの写真、手に入れましたヨ」
「こら、はるか。乱暴にするなっ」
「新商品、バトルで直枝さんの顔を拭いたあぶらとり紙、です」

 わらわらと、リトルバスターズの女性陣がやってきた。

「今夜の交換会はどんなですかネ? あ、ちなみに姉御と小毬ちゃんはバトル中なんでもうちょっとしてからきますヨ。ってわっはー、理樹くんだ」

 えーと、三人だけじゃなく、もしかして全員……?

「なるほど……。つまり、勝手じゃなくて、バトルランキングに参加して、合法的に入手すればいいのねっ。全力を尽くしてもらいに行くわ」
「いやいやいや、違うから。なんかおかしいから、あやちゃん」
「棗鈴! このストラップ、もしかして直枝さんがつけていたものではなくって?」
「ん? こないだ、りょーかいの仕事手伝ったらもらえた」
「つまり、直枝を手助けして、その褒美にもらうというのもありということね」
「二木さん……」
「それよりも、直枝さんにこの現場を見られていることに関する説明を頂きたいのですが」
「わふー。とっぷしーくれっとが暴かれてしまいました」
「大丈夫よ。直枝の了解はもらえたわ」
「ということは、理樹くん公認ってことですネ」
「ええと……」

 なんかもう、何を言っても無駄っぽい。

「じゃあ、直枝。何か今困っていることは……あら、そういえば部屋を訪ねてくるなんて、何か用事でもあったのかしら?」
「あ、うん。男子寮の洗濯機が故障しちゃって、その対策を相談したかったんだけど……当面は洗濯板の支給とかかなって」
「あ、じゃあ理樹くんも今洗濯出来ないってこと? じゃあさ、理樹くんの洗濯物はあたしが――」
「洗濯板を手に入れてから自分でやるからねっ」

 かくしてこの日以降、参加者が増えて更に白熱するバトルランキングと、やたらと増えた寮会のヘルプ、そしてご褒美を期待する視線によって、僕の溜息は増加の一途をたどるのだった。
 はあ……。




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