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カシャアッ

 いつものようにカーテンの開け放たれる音。俺はそれで目覚める。
 智代が迎えに来てくれるようになってから大分たった、おかげで朝早く起きるのも慣れてきていた。

「朋也……朝だぞ……」

 しかし、その日はいつもより智代の声が弱々しく感じられる。朝の太陽の光のまぶしさに耐えられず、布団を頭までかぶってしまったため、音がある程度遮断されてしまったからだろうか。
 とりあえず布団を外し、智代の顔を見て朝の挨拶をしようとする。

「ああ、智代。おは……」

 そこで俺の口は止まってしまった。布団を外したすぐ近くに智代の顔があったからだ。それだけならまだしも顔が赤い。

「はぁ……はぁ……」

 しかもはぁはぁ言ってますよ。はっ、もしや俺の童貞くんピンチ?

「とっ智代。とりあえず話し合おうじゃないか。確かに俺たちはそこまでの関係に近づいているが、その、朝学校に行く前ってのはなあ。体力的にも問題あるし……」

 ていうか俺も何言ってるんだ。奥底では望んでいるみたいじゃないか、いや、望んではいるけどさ。
 しかし智代は話を聞いてないのか息を荒くしたまま何も言わない。それどころか少しづつ近づいてくる。

「朋…也……」
「だっだから落ち着けって、なっなっ」

 説得するが智代の近づく速度が落ちる気配はない。
 ああ、もうこうなったらあきらめるか。智代と愛欲の日々。それも悪くないかもしれない。
 俺は目をつぶり、智代の行動を待つ。

どさっ

 智代の顔は、俺の右肩の方にそれていった。
……いや、別に残念だなんて思ってないけどさ。ここまで期待させといてなあ。

「……って、智代! おーい、大丈夫か!?」

 そのまま動かなくなった智代。智代の体が熱い。顔が赤くはぁはぁいってたのはまさか熱出してたからか! 智代を優しく動かし、俺のベッドに寝かせたあと、俺は急いで看病するための道具を取りに行った。





『甘い話』





 額をさわって確認する。間違いなく熱がある。智代の額の上に水で濡らしたあと十分にしぼったタオルをのせ、傍について看病する。
 ちなみに学校の方へは既に休むということを伝えておいた。俺も風邪ということにし、智代の方はなんとか電話番号を聞きだし、家族に伝えておいた。電話に出たのは弟らしく、こちらの事情を知っていたのか「うまく伝えておきます」と言ってくれた。

「学校……へ行く……ぞ」
「あーわかったからさ」

 意識が朦朧としているのだろうか、うなされているようにつぶやく。
 智代のやつ、そんなに俺を学校に連れて行きたかったんだろうか。

「まあ、今日は俺が看病してやるから無理しないでゆっくり休め」
「……」

 すると智代はおとなしくなり、安心したかのように眠り始めた。
 静かな寝息をたてながら眠る智代。
 そういや智代の寝ているところなんて見たことないからちょっと嬉しくなる。
 それにいつも強い部分をたくさん見ているから、こういう弱い部分も見せてもらえると男としてちゃんと信頼されているんだなと感じる。
 タオルがぬるくなってきたので水につけて再び絞りなおし、額にのせる。
 さて、俺も学校に行く必要がなくなったんだ。ゆっくりしますか。





「……う、ん……」
「お、目え覚めたか」
「朋也……」

 ある程度時間がたった後、智代が起きる。まだ状況が理解できていないらしく、周囲を見回している。

「ここは……朋也の部屋か」
「そうだ、お前が熱出して倒れたもんだからびっくりしたぞ」
「そうか……そうだ! 学校は」

 上半身をばっと起こし、智代が聞いてくる。

「馬鹿、そんな熱で学校行こうなんて考えるな。第一、ここまで来るのもおかしいってのに」
「すまない……」

 俺がたしなめると、智代はすぐに謝ってきた。どうやら熱で心も少し弱っているようだ。

「いや、謝る必要ないからさ。今日はゆっくり休め。俺が看病してやる」

 意識が朦朧としているときはちゃんと聞いていなかったかもしれないので改めて言う。素直に智代はうなずいたので、起き上がらせた上半身を再びベッドの上に寝かせた。

「なあ……朋也」
「どうした?」

 智代が横になりながら話しかけてくる。
 顔に笑みを浮かべながら、なんでもないようで胸にじわりと来る一言を口にした。

「こういう風に看病されるのって……悪くないな」
「……ああ」

 そういや智代は一時期家族との関係がひどかった。今はそうでもないらしいが、多分そのときは家族にすら弱みを見せた事はなかったに違いない。看病してもらうことなどなくて当然だろう。
 せめて自分だけは智代の拠り所でありたい。そう感じた。
 ふと、時計の時刻が目に入る。正午を過ぎていた。

「……おっと、もうこんな時間か。飯でも買ってくる」

 飯なんて作ったことないので、近くでなんか買うことにする。おかゆとかもきっと売っているだろう。

「……早く戻ってきてくれるか?」
「ああ、すぐ買ってくる。お前も腹減っただろ?」
「……ああ」

 少しの沈黙の後うなずく。どうやら早めに買ってきた方がよさそうだ。

「待ってろ、すぐ買ってくるからな」

 俺は金を持って、すぐ近くの店まで走っていった。



「……そういう、わけではないのだけどな」





 レトルト食品のおかゆを買ってきた俺は、作り方どおりに作った後別の容器に入れる。なんとなくそうした方が見栄えがよいからだ。

「智代、飯持ってきたぞ」

 お盆におかゆを入れた容器と蓮華を載せ、持っていく。

「さあ、食え。食べんと治るものも治らんしな」

 そういってお盆を手渡そうとするが、智代は手を動かそうとはしない。ただじっとお盆を見つめているだけだ。

「ん? どうした。食欲がないっからって食べないのはよくないぞ」

 そういって取るのをうながすが一向に取ろうとしない。
と、そのとき恥ずかしそうにしながら智代が小さく口を開いた。

「朋也……入れてくれ」
「……えっ?」

 声が小さくて部分的にしか聞き取れない。『入れてくれ』ってなんだ? 塩とかしょう油か?
 いや、それだったら別に恥ずかしそうにする必要はない。じゃあ一体……

「すまん、よく聞こえなかった」

 もう一度聞いてみることにした。
 智代はさらに顔を赤くしたが、やがて意を決したように大きな声で言った。

「朋也が! 食事をくっくっ…口に入れてくれ!」

 ああ、なるほどね。そういうことか、どうりで恥ずかしがってたわけだな……

「……っておい!」

 どういうことか気付いたとき、俺も顔が真っ赤になった気がした。とはいえ、智代の赤さにはかなわないだろうが。

「別に構わないがお前……」
「いっいいじゃないか! 私だって甘えてみたいんだ!」

 赤くなった顔で必死になりながらそんな言葉を口にする智代。
……正直、かわいすぎ。お盆持ってなかったら抱きしめているところだ。

「落ち着けって。熱がまた再発するぞ」
「もう多分している……」

 息を荒くしている智代。さすがにこれ以上興奮させるのも何なので、素直に智代のお願いを聴いてやることにした。
 蓮華で一口分のおかゆをすくい、ふうふうして覚ました後智代の口まで持っていく。

「ほら」
「あっああ……」

 智代はじっと蓮華を見つめた後、おかゆを口にする。

「どうだ? うまいか?」
「……もう少し冷まして欲しい」
「本当に今日は甘えん坊だな」
「……今だけだ」

 そういいながらもすごく嬉しそうにしている智代を見ると、なんだかんだ言って甘えたいんじゃないかと思う。

「智代……」
「どうした? 朋也」
「まだ……甘えてもいいぞ」
「……本当に、いいのか?」

 その証拠に、俺が許可すると智代は信じられないような、嬉しさをどう表現しようか迷っているような表情になる。俺は智代の念押しに対して返事をした。

「ああ」

 途端笑顔になる智代。この表情を見ながら、俺はこれからも智代と一緒にいようと考えるのであった。



終わり


あとがき
 智代支援SSとして某サイトに投稿したものです。智代の誕生日なのに智代SSを更新しないのはどうかと思い、うちでも公開することにしました。
 つかマジでごめん、なんもネタが思いつかんかったの。誰か励ましてください(ぇ