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――4月29日







 頭が割れるようにいたい。





 押しつぶされるような感覚。





 何度も何度も襲ってくる。





 何だろうこれは。





 今までの経験にはない痛み。





 しかし、俺はこの痛みの正体が何であるかを予想できていた。





 これは……この痛みは……










「間違いなく二日酔いだな」


 俺はベッドから起き上がりつつつぶやいた。
 原因は昨日の打ち上げだ。あの日、スメルライクティーンスピリッツだったか? それに勝利した俺たち古河ベイカーズはあの後その勢いで古河の家で祝賀会をあげたのだ。
 思い出そうとすると頭痛がそれを邪魔する。ただ、そこは混沌(カオス)的状況だったのはよく覚えている。
 そんなこんなでひたすら酒を飲みまくった俺はなんとか帰ってはこれたものの今現在こうして二日酔いに悩まされているのである。
……今日はさぼるか。
 そう決意し再び布団の中にもぐった。普段からさぼっているんだ。頭痛という肉体的痛みがある日はなおさら休まずにはいられない。第一、時計を見ても普通に学校へ行くぐらいの時間だ。
 休むと決めた途端頭痛が和らいでいく気がした。学校へ行きたくないという気持ちが頭痛を助長させていたのかもしれない。
 カシャァッ、とカーテンが開け放たれる音がした。

「岡崎、起きろ。朝だぞ」

 女の声がし、布団が俺の体から引き剥がされる。よくわからない状況に思わず完全に目がさえてしまう。
 目の前には智代がいた。

「起きたか、おはよう岡崎。いい朝だぞ」
「いや、確かに快晴なんだろうが」

 窓から差し込む光の強さからわざわざ外を見なくても予想がつく。それ以上に俺の心は何故智代がここにいるのかという疑問でいっぱいだった。

「なあ、なんでお前俺を起こしに来たんだ?」
「なんだ、昨日のことをもう忘れたのか?」

 昨日の事……二日酔いに耐えつつ記憶を探ってみる。



『なあ、岡崎』
『んあ?』
『こんなに飲んで……明日学校はどうするんだ?』
『学校? 大丈夫だって。もしものときはさぼるし』
『こんなことでさぼるとは正直感心しないな。よし、明日は私が起こしに行ってやろう』
『ん? ああ、じゃあ頼むわ』



「そういえば……」

 そんな約束したっけ。正直冗談だと思ってた、だから俺もネタで了承したわけだし。

「よし、なら一緒に学校へ行くとしよう」
「待ってくれ、行きたいのはやまやまだが……あつつ」

 痛みがぶり返してきた。その痛みに思わず頭を抑えてしまう。智代は心配そうに座って俺の顔を見ると、

「二日酔いか? ならシャワーを浴びてきた方がいい」
「シャワー?」
「ああ、二日酔いに効果があるらしい」

 なんとなく説得力のある言葉に体を動かされ、シャワーを浴びに行く。全身にシャワーを浴びせるとほどよい刺激がだるさをやわらげていく。どうやら本当に効果があるようだ。
 シャワーから上がって着替えてきたところを智代は俺の分のカバンの用意をして待ち構えていた。そしてそのまま学校に強制連行される。曰く、

『本当は二日酔い用の料理でも作ってやりたかったが、時間がなかったからな』

だそうだ。ちょっとありがた迷惑だなと思った。



 途中まで走っていった後、時間に余裕ができたので歩き始める。というか二日酔いの日に走って移動は正直つらかった。

「そういえば岡崎」
「ん、どうした」
「本当にやるのか?」
「ん? 何をだ」
「ほら、昨日古河と約束していたことだ」

 約束……? なんだったっけ。

「ああ、多分」

 よくわからなかったが曖昧に答えておく。渚との約束だからそんなに大したことではないだろう。

「そうか……本当は私も協力したいのだが、選挙活動があるからな」
「ああ、お前本気だったんだな……」

 生徒会、不良である俺にとって正直そんないかにも学校の中枢のような団体の人物と関わる気なんてなかったし、関わるつもりもなかった。

「やっぱり、岡崎は生徒会の人物と関わるのは嫌か…?」
「……前みたいに顔に出ているか?」
「ああ、でも前とは少し違う。まるで何かを選ぶのに迷うような顔だ」

 智代の言うことはずばりだった。生徒会の人間という点では正直関わりたくない、しかし、智代という点においてはこれからもこうやって話していきたいというのが本音だった。これも、あの草野球がここまで結び付けてくれたのだろうか。

「まあ、今はまだ生徒会の人間じゃないんだ。こうやって話もするし通学もしている」
「もし、生徒会の人間になった場合は……」
「そんときは、そんときだな」

 そう、そのときになって考えればいい。この問題は後回しにできる。できるうちに決断すればいいんだ。

「…わかった。これ以上はこの話はしないことにする」
「俺もその方がありがたいな」

 そんな話をしている内に学校の近くまで来た。ふと、その時春原の顔を思い出す。

「そうだ、春原のやつも迎えにいってやろう。あいつ寮に住んでるんだし」

 当然、これには春原のやつも道連れにしようという考えが含まれていた。俺だけが規則正しい登校をするのは割に合わない、あいつにだってそれくらいはするべきだ。

「残念だが、もうすぐチャイムがなる。あいつなど迎えに行っている暇はないぞ」

 そういって学校の時計を指す。時計はチャイムがなる2分前を示していた。

「というわけで行くぞ朋也」
「げっマジか」

 手を引っ張られそのまま靴箱まで連行されていく。結局、春原を道連れにする作戦は失敗に終わった。
……畜生、春原の奴覚えてろよ。逆恨み以外の何物でもなかったが、とりあえずそう思っておくことにした。





2話