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 学校からの紹介で就職はしたものの、不良学生であった経歴から、元々職場での受けはよく なかった。
 それでも、俺は努力をした。何故なら、目標があったからだ。
 今度こそ、俺は真面目に生きるのだと決めていた。
 成績優秀で生徒会長もつとめ、英語の弁論大会では全国にその姿が放送されるほど将来有望 なあいつが、時間を作り出して俺の世話をしに、一人暮しのアパートまでやってくるのだ。
 いつもすまないと思っていた。するとあいつはきにするな、と笑うのだ。そして、するなら 謝罪ではなく感謝にして欲しいと。
 更に、高校を卒業すれば自分も一緒にここへ住み、毎日世話をしてあげるという。
 あいつは、とても才能にあふれている。それに、人を引きつける魅力がある。
 もともとあったそれは、生徒会長という業務を果たすことで更に開花されていった。本来な ら、あいつはこんななんの取り得もない男が住む安アパートで、家事に忙殺されるような人生 を歩むべきではないはずだ。
 だというのに、「私がそうしたいんだ」といって、あいつは俺の為に尽くしてくれる。
 ならせめて俺に出来ることは、自分の精一杯の努力で答えることだけだ。
 学生時代のようなことを繰り返さないためにも、俺は精一杯仕事に取り組んだ。俺の側で微 笑んでいてくれる、あいつの為に。
 ちょうど、時期が悪かった。
 さらに、親父が逮捕された直後のことだったのだ。
 周囲の目は更に冷たくなっていた、そんな時だ。




 働いている町工場で、現金が紛失した。






『沈む日々』






 警察には届けられなかった。
 金額が、大した物ではなかったことが一因だ。被害は、一万円にも満たない。
 さらに、周囲が荒らされた様子は見られなかったのだ。だから、内部の人間の犯行だと推測 された。
 ただでさえ、特徴などないような小さな工場だ。事を荒立てたくなかったらしい。
 しかし、警察が介入しないからといって事件そのものがなかったことになるわけではない。
 犯人探しが開始された。それが、どんな探し方だったのかは知らない。
 ただ、結論は明快だった。
 俺は、弁明を聞いてもらうことすら出来ずに、解雇された。




 あいつは俺を慰めた。そうして、次はきっと理解ある人がいる場所で働こう、と言った。




 俺は職を求めて、職業安定所に通うことになった。
 だが、どこの採用担当も同じ顔をして、同じ事を聞く。
 親父の話。前の職場を、数ヶ月で止めてしまった理由。
 真面目に話したこともあれば、もっともらしく聞こえるような話に少しだけ書き換えたりも した。けど、結局は同じ。
 俺を雇ってくれるところは見つからなかった。
 毎日毎日通った。俺の心配をしてくれるあいつが、食糧だけはまかなってくれていたけれど 、そのほかの生活費はどうしようもないのだ。
 稼がなければ、もう誰もいなくなったあの家へ戻ることになる。
 それだけは避けたかった。
 けれど、見つからない。こんなに頑張っているのに、見つからない。




 あいつは俺を励ました。きっと見つかるはずだからと、毎日毎日励ました。




 とうとう生活費がそこをついた。
 俺はアパートにいられなくなった。
 あいつは自分の家に来いといってくれたが、そんなことが出来るはずもない。数日、公園で 寝泊りをした。
 けど、そんなのは無理だ。あいつにも怒られた。
 結局、俺はあの家に戻らざるを得なくなってしまった。
 後から考えてみれば、単なる家出レベルにしかなっていなかった。




 あいつは俺を世話してくれた。元気を出せ、そんな落ちこんだ顔をしていると、出来ること も出来なくなるといっていた。




 何もかも、一向に進展がなかった。
 職は見つからず、あいつの励ましを聞き、食べては寝る生活。
 もう、良く分からなかった。
 なんであいつは、俺に尽くすのだろうか?
 そんな疑問を口にしてしまう。
 好きだからに決まっているだろう、とあいつは言うのだ。この俺を、好きだと。
 犯罪者の息子であり、まともに社会生活を営むことを許してもらえないこの俺を。
 そんな思考が浮かんでは、はっと気付いてそれを振り払う。
 でも、俺の心はきっと、病気になりかかっていた。




 あいつは俺のそばにいた。そして、毎日毎日変わらない励ましの言葉を言うのだ。




 俺は家から出ることも億劫になっていた。
 あいつは注意と励ましの言葉を口にする。
 けれど、俺はいいかげん聞き飽きていた。
 それを察してくれることもなく、あいつは俺に言いつづける。
 俺の心は、もう病気だった。
 俺は強引に、あいつに襲いかかった。もう、黙っていて欲しかったからだ。
 かなり乱暴だったはずだ。けれど、あいつはほとんど抵抗しなかった。あいつが抵抗してい れば、俺なんか簡単に吹き飛ばされていただろう。
 あいつは俺のすることを受け入れた。あまりにも従順なあいつに、俺の興奮はとても高まっ た。そして思ってしまったのだ。
 こんなことだけを続ける、そんな、毎日を。




 あいつは俺に従った。 きっと、自分にも責任があったと感じていたのだろう。




 怠惰と堕落が支配する生活だった。
 家に充満するのは、男女の性のにおいだ。
 それが染み込んでいくに従い、昔はあれほど嫌がっていたこの家が、嫌いではなくなってい た。
 マーキングのような物か、と思う。
 もはや、この家だけが俺がいて良い場所だった。
 気の向くままに生活した。そのための資金は、あいつがどこからかもってきた。
 まあ、俺自身はさほど金のかかる生活をしていたわけじゃない。俺が求めるものは、そのほ とんどがあいつの体だったからだ。
 俺はただぼうっとし、あいつを貪り、あいつの飯を食べ、寝るだけだった。





 そうして、ふと気付く時がある。
 自分は、心の病にかかっているのだろうと。
 だが、もうどうでも良いような気がした。
 どこまでも落ちていってかまわない。
 居場所は、あいつが作ってくれる。俺は、あいつと一緒にいるだけで良い。
 こんなにも楽な生活はない。
 ない、はずだ。
 ただ、一つだけ……
 時折俺を見つめるあいつの目が、悲しそうな色に染まるのを見さえしなければ。





 おわり






 あとがき
 ええと、この作品は気分転換で、殴り書きみたいな感じで書きました。
 プロットもかなり適当なので、キャラ名をださないことに深い意味があるわけでもなく、な んとなく流れで「あ、だしてないなー、このままいくか」となった程度のものです。
 気分転換でこんなの書くのはどうなんだろうとも思いますが、「大好き」「大嫌い」を直前 に読んだことも影響しているかと。
 えー、つまりですね、お気に召さなくてもあんまり気にしないでくださいということです。
 ……はっ、考えてみれば今回の連続更新、全部勢いで書いてるっ!?