リトルバスターズ!ss


『デート』


 本編の唯湖(真・エンド)後の設定です





 告白されて付き合うようになった。
 恥ずかしそうに頬を染めて僕に伝えた想い、それに僕は答えた
 付き合おう、と

「もう二学期も終わりだね」
「この机と椅子で一緒にジュースを飲むのも辛い時期になってきたな」

 そっと手を繋ぐと、お互いの暖かさが伝わる。それがとても嬉しい

「しかし、理樹君もサボったらダメなんじゃないのかい?」
「この時間が自習だったから来ただけなんだけどね」

 こうやって自習の時間があったら、二人きりになれるように努力してきた
 皆一緒に居て何か話してたけど、僕のことはスルーだ
 僕と唯湖さんとで付き合うようになったときから、暗黙の了承らしい
 二人して缶ジュース飲みながら、のんびりと暮れ行く秋を眺めてるだけなんだけど

「今度さ、二人でどこか行こうか?」
「どこか?」
「いや、まぁ、本当にどこかなんだけど」
「デートだな」
「そうとも言うかな」

 あの間に僕と唯湖さんとの間でデートらしいデートはしてない

「放課後一緒に帰ってるのは何時もだが、土曜や日曜に出かけてることはなかったから」
「そうだね」

 ジュースを飲み終えて、缶を机の上に置く
 うん、確かに放課後に一緒に歩いて帰ってるけどデートはしてない
 放送室でのんびりととかなら結構してるけど

「それじゃあ、次の日曜日一緒に出かけようか?」
「ああ」

 頷いて返してくれるので良いのだろう。しかし、デートか
 何時もは制服だけど、服どうしよう?
 いまさらながらにどきどきしてきた
 お互いに目があって、苦笑いでごまかしてしまう





 その後しばらくして、日曜日までの間二人で話しながら何しようかなどとデートの計画を立てる
 そのことは、恭介や皆に一気に知れ渡ってしまった




「デート日和?」
「うむ」
「ゆ、唯湖さん!?」

 いきなり後ろに居るから驚いた
 後ろを振り返ると、スーツっぽい服で普段と変わらないけど、胸のボタンは上まで止めている
 それでも、綺麗な黒髪に似合ってるし、大人っぽい

「なんか、何時もと違って恥ずかしいね」
「そうだな。服だけで、新鮮な気持ちになれるとは考えなかったな」

 お互いの気持ちの問題もあるのだけど、ちょっと驚きだ

「い、行こうか?」

 自分の服装に少し気落ちしてしまう。自分ももっとシックにまとめておくんだったなぁ
 10時集合で待ち合わせ場所に早めに着たけど、服は何時ものシャツとズボン
 それと上に着てる上着みたいな服だけ

「理樹君、映画だったよな?」
「ええ」
「なんだか、こうやって普通っぽいデートというのか?」
「多分。僕も初めてなことで」



 映画館でお互いにポップコーンとジュースという定番を買って、ラブロマンス巨編と書かれていたのを見た
 涙を流す人たちが大勢いるけど、僕と唯湖さんの二人は、手をぎゅっと握ってた
 こういう恋愛はファンタジーだけど、感動するし僕も最後の方は少し涙目になっていた
 唯湖さんは冷静そのものでキスシーンとかは少し赤面していた
 ちらっと横を見て目があったし




 外に出るとお昼時……目が赤いとかは無いけど
 唯湖さんは僕の手を離さない

「唯湖さん?」
「ああ。すまない。その、離れたくないというか」

 なるほど。映画に感化されたという事か
 悲恋のお話ということで、最後、離れ離れになるヒロインと主人公というのだから
 確かに、手を離すと離れてしまう。それは寂しいし悲しい

「じゃ、このままで」
「ああ」

 そっぽを向きつつも照れて真っ赤になる唯湖さんは可愛い
 恥ずかしくてこちらを見ないのが分かるし



 内心では大変だろうなぁ。唯湖さんの可愛い一面が見れて嬉しいけど

「理樹君、何でそこで微笑んでるかな?」
「可愛い唯湖さんが見れて嬉しいから」
「理樹君は意地悪だ」
「そうかな?」
「恭介氏に似てきたぞ」
「そう。それはちょっと嬉しいかな」
「はぁ〜」

 そんなところでため息つくなんて
 喫茶店で休んでる僕と唯湖さん
 と、唯湖さんが外を見る。僕も釣られて見る
 …………えっと

「みんなだな」

 リトルバスターズの面々が揃ってこちらを追いかけてきていたようだ
 というか、こちらを見ているという事なんだけど

「つけられてたみたいだな」
「行こうか?」
「まぁ、初めてのデートだ。こんなものだろう」
「うん」

 皆が居ても良い。でも、たまには二人きりで過ごしたい
 学校じゃない、違う場所で

「ばれてたのか?」
「うむ」
「そうなの?」
「理樹君にばれてなかったらいいんだけど」
「普段とはね、違う一面だったよ。唯ちゃんも、理樹くんも」

 二人して、固まる

「それに、手」

 つながれてるところを指差す鈴。真っ赤だろう
 頬が熱いし

「ま、二人のデートも見学したし、帰ろう」
「お〜」

 そのまま皆解散って言う風に離れていく

「あれ? 恭介、健吾と真人は?」
「あの二人は、邪魔になりそうだから、置いてきたんだ。じゃあ、部屋で皆でぱーっとする買出ししてるから」

 恭介も歩いて行っちゃったし、唯湖さんを見ると、お互いタイミングがぴったりだった

「ま、まぁ、これからもまた出かけたら良いし」
「そうだね。皆にお土産みたいなの買っていけば良いかな」
「そうしよう。お菓子で良いだろうが」
「うん」





 結局デートはその後3時くらいに寮に到着すると、皆がパーティ準備していた
 楽しい事は皆で分け合おうって事で、準備も手伝い
 その日、デート記念日とされてしまった。だけど、皆が祝福してくれるのは嬉しくて


『ありがとう、皆』


 そう思う。そして、これからも皆と共に居たい
 勿論、唯湖さんとも……






 おわり





 おまけ

「そういえば、お前らってすることしてるのか?」
「することって?」
「あ〜…………あれだ」
「いや、あれじゃあ、分からないんだけど」
「来ヶ谷」
「ん? なんだ?」
「いや、理樹とその、することしてないのかって」
「はっはっは、恭介氏、言うわけなかろう」
「ぐっ」
「ま、私たちはまだまだこれからと言っておこう」

 僕と唯湖さんは笑顔で頷く。そう、これからだと……