五日目



5日目 〜或いは、とある狩人の物語〜


 思えば、後悔の連続だった。
 もしあのとき、僕が真実を伝えていれば、真人は処刑されなかった。
 もしあのとき、僕が真実を伝えていれば、謙吾は処刑されなかった。
 全ては僕が脅えてしまったから起こってしまったこと。
 そう、これは僕が招いた災い。これは僕がケリを付けなければならない。
 だからこそ僕は我慢した。復讐すべき相手が全く疑われなくなってもじっと我慢した。
 投票すら我慢して別の人に投票した。
 全ては機会を待つため。僕の能力がみんなのためになるのをじっと待つため。
 そして、ついにその時が来た。
 被害者、なし――。
 チャンスはここしかない、僕は覚悟を決める。犠牲になったみんなのためにも、僕はここで勝負に出る。
 全ては勝つため、自分を犠牲にしてでも勝つため。
 僕は、復讐すべき相手に向かってこう宣言した。

「謙吾……今、仇を取るよ。古式さん、貴方はニセモノだ!」



「驚きました。まさか直枝さんがそんなことを言うとは思わなくて」

 古式さんは僕の言葉に多少言葉を止めたものの、それをうまく隠すかのように言葉を紡ぐ。

「しかし、そこまで言うからにはあるのでしょうか。私が狩人ではないという証拠が」

 静かに、しかし重くプレッシャーをかけてくる。けれど、僕は動じない。もう、サイは投げられたのだ。

「そもそもさ、おかしいと思わない? 狩人がわざわざ正体をばらしているんだよ。人狼にとってある意味最も厄介な狩人、僕がもし人狼なら、すぐに正体をばらした日にでも襲うよ」
「それは、人狼側の、私が偽物だと疑わせて村人に吊らせる作戦だったのでは」
「それはあるかもしれない、でも、僕はそれ以上に古式さんが偽物である理由を知っているんだ。そう……」



「――僕は、狩人だ」



 そう、僕は最初から知っていた。古式さんが偽物だってことに。だからこそ、謙吾を最後まで信じていた。多分、そうでなくても信じていたけど。

「僕はそれをわかっていたから謙吾の占い結果は正しいと思っていたし、謙吾には投票しなかった」

 少しずつ、でも、確実に正論を述べ、相手を追い詰める。確かに見た目は人間、しかしその正体は人狼。謙吾がそう言っていたのだ。間違いない。

「狩人は生きているだけで能力者を襲いづらくできる。それなのに、生きていたのはおかしいんだよ。やっぱり」
「で、ではあなたは何故出てきたのですか」
「簡単だよ。死人が出なかったから。僕はずっと待ってたんだ。死人の出ない日を。僕が村人を守れたかもしれないから」
「そ、それは人狼が狐を襲った可能性も……」
「あるだろうね、でも、なんとなくそうじゃない気がするんだ。だって、僕が昨日守っていたのは霊能者の小毬さんだもの。そろそろ能力者が襲われそうなタイミングじゃないか」
「で、ですが」
「それにね、僕がこうやって正体を表すことで、貴方がより一層怪しいものとなる。何せかたや本物、かたや偽物だからね。必ずどちらかを吊ろうとする。ただ、この状況で皆が信じてくれるのは――僕だ」

 絶対に逃がさない、今日、ここで、お前の運命を終わらせる。

「……なるほど、確かに状況から見てあきらかに怪しいのは古式さんの方です。占い師に人狼として見られているところ、占い師がすでに二人存在しているところから見ても、あなたは人狼の可能性が高いでしょう」

 それに追い打ちをかけるように西園さんが僕の方についてくれる。

「……あたしも、理樹を信じる。いや、理樹なら信じる!」

 鈴もだ。あとはもう、みんなこちらに味方してくれていた。

「念のため、明日は小毬さん。みんなに結果をよろしく。間違いなく、人狼と結果が出るだろうから」
「う、うん。わかったよ」

 小毬さんはおそらく本物の霊能者だろう。狐が騙っていたら話は変わるけど、恐らく占い師の片方は狂人のはず。
 その、狂人と思っている相手はというと。

「あの、その。今日の占い結果は美魚さんが村人でした。ちゃんと占い結果は伝えとかないとって。その……」
「ゴメン、クド。僕は、クドのことを信じてない、いや、謙吾を信じているから。信じられないんだ」

 僕はクドに対して今の正直な気持ちを告げる。ひどいとはわかっている、でも、クドも謙吾が処刑された原因の一つと考えると、どうしても許せなかった。

「そんな……」
「三枝さん、共有者は大変だと思うけど、頑張って」
「理樹くん、まっかせといてください! ……でも、なんでそんな遺言みたいな」
「遺言みたいな、じゃない、遺言、なのよ」

 朱鷺戸さんが苦しそうに言う。
 そう、狩人が正体をばらすということ。それは僕が言ったように、ほぼその日襲われるようなもの。

「理樹君……キミは……」
「来ヶ谷さん、後は任せたよ」
「……そうか、これが感情か、痛みか」

 来ヶ谷さんが胸を押さえている。よほど辛いのだろう。
 そんなこんなで投票の時間が来た。
 悔いは、ない。少なくとも、一矢は報いたはずだ。

5日目 投票結果。
朱鷺戸沙耶 0 票 投票先 → 来ヶ谷唯湖
棗鈴 0 票 投票先 → 古式みゆき
能美クドリャフカ 0 票 投票先 → 古式みゆき
三枝葉留佳 1 票 投票先 → 古式みゆき
神北小毬 0 票 投票先 → 古式みゆき
直枝理樹 1 票 投票先 → 古式みゆき
西園美魚 0 票 投票先 → 三枝葉留佳
古式みゆき 6 票 投票先 → 直枝理樹
来ヶ谷唯湖 1 票 投票先 → 古式みゆき


――こうして、5日目の昼、村民協議の結果【古式みゆき】は処刑された――。





 夜、家の扉がなった。
 やっぱり、か。僕の家に来たのは。
 やはり狩人は人狼にとって厄介な存在なのだ。僕の推理は間違っていなかった。

「いいよ、開いてるから。入って」

 別に鍵を閉めたりはしなかった、しても無駄だということは、これまでの他の人の襲われ方を見てもよくわかっている。

「やあ、いらっしゃい……へえ、そうだったんだ」

 僕は最後の人狼を見てもそこまで驚かなかった。諦念の境地に達していたからだろうか。

「うん、やっぱり、古式さんが人狼だったんだね。悔いはないよ」

 僕は最後の人狼に笑顔を向ける。よく見知った顔だったからだろうか。
 そんな僕も、最後は驚きの表情で死んでいくことになる。

「……」
「えっ、今……!!?」

 人狼の一言の後、ちぎれ飛ぶ胴。間違いなく、意識が飛ぶのもあと僅かだろう。
 けれど僕は最後の彼女のメッセージが、どうしても頭にこびりついて離れなかった。
 だって、人狼は最後僕に対して、間違いなくこう言ったのだ。



『愛してる』と――。



――【直枝理樹】は翌日、無残な姿で発見された――





あとがきという名の杉並の絶叫

杉並「キャー!! カッコイイ!! まじ主役!! まじ英雄!! マジイケメン!! マジ大好き!! ルイズコピペもびっくりなくらい叫んじゃう! ああ直枝君素敵カッコ良すぎるよほんと。普段可愛い顔なのにいざという時の頼れる目、肩、腰! 腰は願望! ああ、何言ってるんだろうでもそんな私を狂わすくらいかっこ良かった! ああもう理樹君って呼んじゃう、呼びたい、呼ばせてください! 理樹君!りっきくん! りっきりっきくん!! ああああああ!! 理樹君はもう宝物! 至宝! 私の王子様!! キャー!! 王子!! 出来れば下半身の馬で暴れてください! 私の上で!! もう既成事実作りましょう! 既成事実既成事実既成事実!! 元キャラが何だー! 元キャラなんて飾りですお偉方にはそれがわからんとです! 誰かわからなくても私がそれを知っていればいいの! ああ、私の思い理樹君に届け! 霊界に行った理樹君に届け!!――――あと人狼は死ね」
時風「…………GMがCO、杉並は狂人だった」
杉並「あっ! すみません解説でしたね! でも今回はもう理樹君最高だけでいいんじゃないでしょうか!」
時風「い、いや、そういうわけにも行かないからな。まあ、ともあれ、ここでの狩人COは良かったと思う。ここでの狩人のナイスガードのおかげで一日吊る回数が増えたという点でもな」
杉並「なるほど、勝率があがるということですね」
時風「そうだな。強いて難点をあげるとするなら、実際の試合でだが、もう少し謙吾が真の占い師だったんじゃないかというのを強調すべきだったかもなと。まあ、これはこの後を見ての意見になってしまうが。まあ、これで霊界から見る限りでは流れが人狼側から一気に対等にまで持って行けていたと思う」
杉並「ですよね、やっぱ理樹君は最高なんです。かっけーんすよぉ」
時風「……時風です、自分の暴走の歯止めとして呼んだ相手が暴走しとるとです。時風です……」
杉並「古いですよ、それ。ともあれ、この理樹君のすんごい活躍からどうなっていくか、是非見物ですね!」
時風「残念だが、次回はまた流れが変わる。まあ、それはお楽しみってことだな」
杉並「そうですか……それは残念ですけどでも、やっぱ理樹君サイッコーです! 人狼は死ね! 同人誌まみれの部屋で全裸になっているところを隠していたはずの親に見つかって死ね!」
時風「なんという処刑……暴走が悪化する前に、今回はここまでとする。それでは、また」


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