一日目



2日目〜或いは、とある狐の物語〜


 あたし、ワタシ、わたし、私――。
 うん、私だ。ようやく、この姿と言葉に馴染んできた。
 私は、周りからは妖狐と呼ばれている存在。私も人狼と同様、人に害する存在。
 ただ、違うのは、人だけではなく、人狼にとっても私は敵だということだ。
 私の元になった人物の記憶――うん、どうやらこの子には妹がいるらしい。記憶を手に入れている以上、私もこの子に興味を抱いた。
 そうだ、せっかくだから私はこの子に味方しよう。この子が人狼であれ、村人であれ、この子と私が生き残れば全く問題ないのだから。
 私――二木佳奈多はそう方針を固めると、ゆっくりと眠ることにした。どうせ、人狼の馬鹿共が私を襲うことは不可能なのだから――。

 次の日、目が覚めるとそこには棗先輩の死体があった。
 おそらく人狼共が殺したのだろう、私も驚くふりをする。

「きょーすけが、死んだ……?」
「落ち着いて、鈴」

 茫然自失となっている棗鈴を直枝が励ましている。自分だって辛いだろうに。

「そうね、ここで嘆いていても何も始まらないわ。占い師、っていうのがこの村にはいるのでしょう。出てきたらどうかしら」
「おねーちゃん、強いデスね……」
「違うわ、ただ、手を拱いて見ているのが嫌なだけよ。幸い、狩人がいるから直接狼に狙われることはないはずよ」

 もちろん、これはある意味で私の最大の敵である占い師が誰かを見分けるため。私の体はあの忌々しい力に拒否反応を示すようになっている。せめて敵の姿を知っておきたい、というのが私の考えだ。
 
「佳奈多さんがそういうのでしたら……占い師の能力を手に入れたようです。ワタシはリキを占いました! 結果は村人です! リキは疑いたくなかったから……とっても嬉しいのです!」
「クド、ありがとう……!」

 クドリャフカが手を上げて皆に占い師であることを伝える。その言葉に笑顔を向ける直枝。
 みんなそれに良い表情をする、だが、一人だけ全く違う表情をしていた。どこか苦しそうな表情。やがて、その人物が口を開いた。

「違う、そいつは占い師じゃない。何故なら、俺が占い師だからだ」

 宮沢謙吾、彼もまた、占い師だと公言する。

「えっ、えっ、占い師が二人って……どういうことなの?」

 神北さんは状況をよくつかめていない、他の人たちも同様のようだ。

「いえ……おそらくもう片方は昨日言われた狂人、というやつなのでしょう」
「人外、の可能性もあるな。なるほど、確かにこれは疑心暗鬼にもなる」

 状況をいち早く察したのは西園さんと来ヶ谷さん、ここは流石と言ったところだ。

「お、おい、ちょっとまてよ。謙吾、だとしたらお前占ったってことだよな。一体、誰を占ったんだ?」

 井ノ原が宮沢に対して誰もが疑問に思っていたことを口にする。
 宮沢は大分言いづらそうにしていたが、やがて、意を決したのか口にした。

「俺が占ったのは……古式、お前だ。そして、結果は……人狼、だった」

 途端、場に静寂が訪れる。
 謙吾もクドと同様、ある意味一番関わりのあった相手を対象にしていたのだから。

「そう、ですか。まさか宮沢さんが敵、いえ、狂人か人狼だったとは思いませんでした」

 しかし、その結果にさほど驚きもせず、淡々と言葉を返す古式さん。

「このまま処刑機にかけられることも仕方ないことなのでしょうが、あえて村人のために私は抗います。私は狩人です。もう少しだけ、皆を守りたいのです」

 それが真実かはたまた虚偽か。それは情報の少ない今は全くわからない。
 ただ、その一言で古式さんに投票する気が皆からなくなったのは確かだった。

「どちら、いえ、誰を信じればいいのかしら……」
「とりあえず、全てを信じてみるというのはどうでしょう」

 西園美鳥さんが悩んでいるところに、美魚さんが答えてくれる。

「そうね、じゃあまずは自分が能力者だってことを公言した人以外の人から投票することにしましょうか」「うー、謙吾が信頼できない……」

 どうやら棗さんは謙吾の方を疑っているらしい。しかし、朱鷺戸さんの言うとおり、今日は能力者以外からの投票となるようだ。

「投票するしかないんですのよね……」
「仕方なかろう。そういうルール、なのだからな」

 辛そうにしている笹瀬川さんに対し、既に覚悟を決めているであろう来ヶ谷さんはばっさりと切り捨てた。
 そして、いよいよ日が暮れて、投票が始まった。
 各自自分が怪しいと思った相手を紙に書く。それをまとめた結果はこのようになった。
 
2日目 投票結果。
朱鷺戸沙耶 2 票 投票先 → 井ノ原真人
棗鈴 0 票 投票先 → 来ヶ谷唯湖
能美クドリャフカ 1 票 投票先 → 西園美鳥
宮沢謙吾 0 票 投票先 → 二木佳奈多
三枝葉留佳 2 票 投票先 → 古式みゆき
神北小毬 0 票 投票先 → 三枝葉留佳
西園美鳥 1 票 投票先 → 能美クドリャフカ
井ノ原真人 2 票 投票先 → 二木佳奈多
直枝理樹 0 票 投票先 → 古式みゆき
笹瀬川佐々美 0 票 投票先 → 井ノ原真人
西園美魚 0 票 投票先 → 来ヶ谷唯湖
古式みゆき 2 票 投票先 → 朱鷺戸沙耶
二木佳奈多 2 票 投票先 → 朱鷺戸沙耶
来ヶ谷唯湖 2 票 投票先 → 三枝葉留佳

「どうやら、再投票みたいね。もう一度、紙に書いて投票して」

 私は少しでも自分にたいする疑いを避けるため、率先して前に出てみた。
 改めて皆に紙を渡し、投票させる。その結果は――

2日目 投票結果。
朱鷺戸沙耶 0 票 投票先 → 来ヶ谷唯湖
棗鈴 0 票 投票先 → 来ヶ谷唯湖
能美クドリャフカ 0 票 投票先 → 西園美鳥
宮沢謙吾 1 票 投票先 → 二木佳奈多
三枝葉留佳 2 票 投票先 → 宮沢謙吾
神北小毬 0 票 投票先 → 三枝葉留佳
西園美鳥 2 票 投票先 → 古式みゆき
井ノ原真人 3 票 投票先 → 二木佳奈多
直枝理樹 0 票 投票先 → 古式みゆき
笹瀬川佐々美 0 票 投票先 → 西園美鳥
西園美魚 0 票 投票先 → 井ノ原真人
古式みゆき 2 票 投票先 → 井ノ原真人
二木佳奈多 2 票 投票先 → 井ノ原真人
来ヶ谷唯湖 2 票 投票先 → 三枝葉留佳

「んなっ! お、俺かよ!」

 井ノ原に決まった。これはもはや運だろう、誰しも、そこまで差はなかったのだから。
 一歩間違えてたら私が吊られていたかもしれない、そのことに安堵を覚えた。

――こうして、2日目の昼、村民協議の結果【井ノ原真人】は処刑された――。



 その日の晩、私は今後のことについて考えていた。
 何故か私は疑われていた、占い師といった宮沢に。彼が狂人だといいのだけれど。
 とりあえず、明日からも目立ちすぎないよう、そしてだまりすぎないよう行動していこう。そして、最後まで生き残って、あの子と幸せに暮らしていくんだ。幸い、今のところまだあの子もそこまで疑われてはいない。後は、私が頑張ればいけるはず。
 そのとき、だった。
 急に胸に、いや、全身に痛みが走る。
 体には切り裂かれたかのような傷跡が出来、血が吹き出す、これは――占われた!?

「そ、そんな……」

 朦朧となる中、私は最後まで一緒にいたかった相手の名前をつぶやいていた。

「葉留……佳……」





――次の日、村人は再び遺体を発見した、発見した遺体は……二木佳奈多。



あとがきという名の時風の解説

時風「よし、ではここでGMである俺が人狼について、ここまでの状況を解説をしよう」
杉並「あ、あのーなんで私が」
時風「歯止め役の相方が欲しかったことと、実際の試合ではいたのに話では無名ということでチェンジされたのを不憫に思ったのでな」
杉並「うう、PSP版ではCV花澤香菜ということで私にもスポットライトが当たっているのに……」
時風「二日目ということでほとんど試合は動かないな。まあこれは仕方ないことだ。だが、共有者が一人として出てこないのは正直感心しないな。ここは共有者が一人でも出てくるべきだった」
杉並「あ、あのー質問なんですが、共有者ってどうして一人で出ることが多いのでしょう」
時風「少しでも騙りに対抗するためだ。共有者って役職は最も村人にとって信頼される役職となっている。むしろ信頼しなかったら馬鹿と言ってもいいレベルでだ。だからこそ、片方が隠れることによって、霊能者、もしくは占い師の偽物が黒出ししたところでカウンターを狙う。もちろん、うまく出来る自信がないとか、すぐに吊られてしまいそうなら共有者は二人ともCO(カミングアウト)することをオススメするぞ」
杉並「なるほど、では、黒出しされた相手が吊られない点はどうでしょうか」
時風「この時点では妥当、と答える他ないな。もし本当に狩人だった場合、村への打撃は半端じゃないからな。ただ、この辺の話は3日目にも関わってくるので今回はここまでとする」
杉並「わかりました。他に何かありますかね」
時風「投票結果で初日から占い師COしたやつに投票するとか疑われても仕方ないのでは、と俺は思うな。村の方針でグレラン(グレー、つまり能力者COも占い師に占われたりもしていない人のこと)が決まっていたのに黒出しされた相手ならともかく、まだ何も決まってない相手に投票するのは悪手だと俺は思う」
杉並「確かに……まあ、もしかしたら他の考えがあったかもしれませんからね」
時風「そのとおりだ。あくまで俺の意見も完全な正解というわけではない。人狼とは色々な考えをするゲームだ。そこに自分なりの戦術を見つけ、自分が参加した陣営の勝利を導いてほしい」
杉並「そうですね、ところで。時風さんってもしかして棗さんのお兄さ……」
時風「それでは今日はここまでだ。次回の解説を楽しみにしていてくれ」
杉並「す、スルーされちゃった……」



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