鈴と理樹は商店街へと繰り出された。

すべての始まりは大富豪だったのだが。

商店街で鈴と理樹の2人は、ある人と出会うこととなる。

これはもう日常なのか・・・?





『第3話 In shopping street with…』





鈴「えっと、確かこの辺に・・・」

理樹「今日はモンペチの新作&特売日だから来たんだね」

鈴「うん、きょーすけのあれが奇跡的にマッチしたから、あの時はのったんだ」

理樹「そうだったんだ。僕分からなかったよ。でも、僕が大貧民じゃなかった時はどうするつ

   もりだったの?」

理樹がそう尋ねると、鈴は黙ってしまう。

その顔は、少し赤かった。

鈴「う、うるさい!そんなのどうでもいいだろ!!」

理樹「ええ!?逆切れ!?」

そんな会話をしている間にも、目的地に辿りついた。



理樹「モンペチにしたって、この安さはちょっと・・・」

『一つ50円』

理樹「普通、こんなに安くは買えないよな・・・」

一体何があったのだろう?

あまりにも安すぎるモンペチに、理樹は少し不安を覚える。

しかし、どうやら賞味期限だけは過ぎていないようだ。

鈴「お?あった」

理樹「あったの?新作の・・・って、これもありえないでしょ!?」

そこにあったのは、新作のモンペチ。

そして、それに書かれていた味は・・・。

『なんともビューティフルな味。これで猫もイチコロよ♡」

理樹「なんで最後の文字がハートなんだ?それに、イチコロって、殺しちゃ駄目でしょ!?」

鈴「いや、そういう意味じゃないと思うが・・・」

珍しく鈴がまともな突っ込みをする。

理樹「とにかく、これらをかごに入れてと・・・」

モンペチをかごの中にどんどん入れていく理樹と鈴。

それだけ買っても、1000円までいかないところが凄い。

理樹「本当に大丈夫だろうか?このモンペチ・・・」

鈴「大丈夫だ。このモンペチは安全だ。私には分かる」

理樹「そ、そうなの・・・?」

とりあえず理樹は、相槌を打つことにした。

そして理樹は、モンペチで埋め尽くされたかごをレジに通して、清算をした。

やはり、これだけ買っても1000円には行かず、財布の中もさびしい状態となることを防ぐ

ことが出来た。

鈴「これでよし。と」

理樹「そんなにたくさん持てるの?」

鈴「大丈夫だ。これくらい・・・おわっ!」

言ってる傍から倒れそうになっていた。

そんな鈴を、後ろから倒れないように理樹が体を支えてあげた。

鈴「あ、ありがとう・・・」

理樹「僕がもう少し持ってあげるよ」

鈴「理樹・・・」

理樹は、鈴の持つ袋を一つ持った。

これで、理樹の持っている袋の数は3つとなる。

鈴「それだと理樹が・・・」

理樹「大丈夫だよ。僕だって一応男の子だから・・・」

鈴「・・・理樹は、やっぱり優しいし頼りになるな」

理樹「そうかな・・・?」

鈴の言葉に素直に照れる理樹。そうしていると、

?「そこにいるのは理樹君ではないか?」

という大人びた声が聞こえてきた。

理樹「その声は・・・来ヶ谷さん!どうしてこんな所に?」

そう。大人びた声の正体は、唯湖だったのである。

鈴「くるがや?何故ここに?」

唯湖「ちょっとした野暮用でな。きょう・・・いや、何でもない」

理樹「?」

唯湖が言いかけたことに、理樹と鈴の2人は不審に思ったが、すぐに流すことに決めた。

唯湖「では、私はここでトンズラすることにしよう」

理樹「トンズラって・・・」

理樹の突っ込みを軽く流した唯湖は、どこかへと消えていった。

鈴「・・・何だったんだ?今の」

理樹「さぁ。僕に聞かれても・・・」

唯湖が消えた先を、ボー然と見るしかない、理樹と鈴だった・・・。



鈴「モンペチは買えたし、そろそろ帰ろう」

理樹「え?他のお店とか見なくてもいいの?」

鈴「モンペチを持ったまま見るのはどうかと思うし、正直恥ずかしい」

理樹「・・・それもそうだね」

こうしてそのまま帰ろうとしていた鈴と理樹だったのだが、ここで突然理樹の携帯の着信音が

鳴り出す。

(ピリリリリ)

理樹「あれ?メール?」

理樹はメールを確認する為に、携帯を開いた。

鈴「誰からだ?・・・って、何!?」

理樹「・・・」

そこに書かれていたのは、こんなメールだった。

『タイトル:オレだ。恭介だ

   本文:買い物中にすまないが、お前達にミッションだ。

      というより、もう買い物は終わっているだろうけどな。

      たった今、謙吾と真人を送り込んだから、荷物はそいつらに預けておいてくれ。

      で、ミッションだが、その商店街の中に、迷子になっている能美がいる。

      見つけ次第、オレの携帯に連絡してくれ。

      以上だ。』

理樹「クドが、この商店街に・・・」

鈴「一体何しに来たんだ?」

理樹「う〜ん(もしかして、さっきの約束と関係があるんじゃ・・・)」

そして、タイミングをバッチリ図ったかのように、

謙吾・真人「理樹〜!鈴〜!!」

謙吾と真人の2人はやってきた。

理樹「よく見つけられたね、謙吾、真人」

真人「まぁな。オレの筋肉レーダーは正確だからな!」

謙吾「いや、この商店街でモンペチの安売りをしていたのはこの店だけだったからな」

理樹「よくそんなこと知ってたね・・・」

鈴「ああ。私が教えた」

鈴が自慢そうに言う。

真人「で、その荷物だな」

理樹「あ、うん」

(ガサッ)

理樹と鈴は、真人と謙吾に、モンペチ入りのビニール袋を預ける。

鈴「私の机の上に置いといてくれ。後は私が何とかする」

真人「おう!」

謙吾「じゃ、お前らも頑張れよ・・・特に理樹はな」

理樹「え?僕?・・・何だかよくわかんないけど、分かった」

とりあえず挨拶を交わして、謙吾と真人は今来た道を戻っていった。

理樹「じゃあ、僕達も探しにいこうか?」

鈴「そうだな」

こうして理樹と鈴も、クドを探すというミッションを始めようとした。

と、その時。

(ピリリリリ)

またメールが来た。

理樹「今度は何だろう?」

そのメールには、こう書いてあった。

『タイトル:なし

   本文:ミッション・スタートだ!!』

理樹「いやいや、そんなの一々メールで送らなくてもいいから!!」

鈴「まったく、きょーすけのやることは分からん」

理樹「・・・だね」

鈴の言葉に納得した理樹は、そう返事せざる終えなかった。

そして理樹と鈴は、改めてクドを探しに向かったのだった。

後ろからの影達に気づくこともなく・・・。



理樹「とりあえず、二手に分かれて探してみる?」

鈴「うん。そっちの方が早そうだしな」

理樹の提案により、理樹と鈴は、二手に分かれてクドを捜索することにした。

理樹は商店街の中の方を、鈴は商店街の出口の方を探し、ここで落ち合うことにした。

そして理樹たちは、本格的に捜索活動を始めたのであった。



理樹「お〜い!クド〜!!」

商店街の中の方を、クドの名前を呼びながら、理樹は走っていた。

しかし、いくら呼びかけてみても、クドからの返事はない。

理樹「・・・こっちにはいないのかな?」

理樹がそう呟いたその時だった。

?「おやおや、何かお困りのようデスね〜?」

?「そうみたいですね」

先ほどの黒い影が二つ、理樹の後ろに現れた。

理樹「え?」

理樹は咄嗟に後ろを振り向く。

そこには、見知っている顔が二つあった。

一つは、はるちんこと葉留佳の顔。

もう一つは、美魚の顔であった。

いったい、何故この二人はこの商店街に来ているのだろうか。

しかも、『この二人』という組み合わせで。

葉留佳「理樹君〜?今、何かとっても失礼なことを考えてなかった?」

理樹「え?いやいや、全然」

美魚「・・・怪しいですね」

理樹「いやいや、本当に何も考えてないって!!」

必死に理樹は抵抗した。

しかし、その行動のほとんどが、考えていたという行動の裏づけになりそうなものばかり

であった。

美魚「まぁその話については置いておきましょう。それで、直枝さんはここで何を?」

理樹「実は・・・」

理樹は、鈴と買い物をしていたら、恭介からメールで、クドを探して欲しいと連絡があったこ

とを、葉留佳と美魚の二人に話した。そうしたら、二人は、

美魚「まぁ、能美さんが?」

葉留佳「クー公がいなくなったぁ?」

と、大まか予想通りの反応を見せてくれた。

理樹「うん。そうみたい。理由はまだ分からないけど・・・」

葉留佳「とにかく、クー公を見つければいいんデスね?」

理樹「まぁ、省略しちゃうとそんな感じかな?」

美魚「私も、協力しますよ」

理樹「ありがとう、二人とも・・・」

どうやら、美魚と葉留佳の二人も、クド探しに協力してくれるらしい。

美魚「では、私はあちらを」

葉留佳「はるちんは、こっちの方を・・・」

(ダダダダダ)

葉留佳はダッシュで、美魚はのんびりと歩いて、クドを探しに向かった。

理樹「よし!早くクドを見つけなくちゃ!!」

理樹も再び、クドを探す為に歩き出した。



その頃鈴は、

鈴「クドー!」

クドの名前を叫びながら、商店街の中を歩いていた。

そうしている内に、目の前に知り合いらしき姿が確認出来た。

鈴「ん?」

その影は、鈴を見つけるが否や、そそくさとどこかへ去ってしまった。

鈴「おい、待て!」

鈴は慌ててその影を追いかける。

そして、何分も経たない内に追いついた。

鈴「な、何!?」

その影の正体は、

恭介「り、鈴か・・・」

なんと、先ほどメールをしてきた恭介だった。

鈴「どうしてこんな所に!?」

恭介「いや、ちょっとした野暮用でな」

鈴「もしかして・・・クドとのことで何かあるのか?」

鈴にしては珍しく、核心の部分をつついてきた。

恭介「・・・いや、ない」

鈴「あるんだな!?」

恭介「お兄ちゃんって呼んでくれたら教えてやる」

鈴「あるんだね・・・お兄ちゃん」

恭介「ぐはっ!あ、あるさ・・・」

鈴が珍しく素直に応じた為、恭介の心はゆすられた。

しかし、言うのがとっても恥ずかしかったのか、鈴の頬は、未だに赤いままであった。

恭介「分かった。全部話すから・・・理樹には内緒だぞ」

鈴「どうしてだ?」

恭介「どうしてもだ」

そして鈴は、クドに相談された内容と、なぜ商店街にいるのかを恭介より聞いた。

そして、すべてを聞いた鈴は、

鈴「何!?」

驚きのあまりに大きな声を出してしまったという。



理樹「う〜ん、見つからないな〜」

恭介からのミッションスタートのメールが来てから30分。

理樹は未だにクドを見つけることが出来ていなかった。

理樹「それにしても、クドは何故商店街に来たんだろう・・・?」

とりあえず理樹は、何故クドが商店街にやって来たのかについて考える。

考えながら歩いている内に、理樹はいつの間にか路地裏に来ていた。

理樹「・・・あれ?いつの間にこんなところまで?」

そして、そこに一軒の店を見つける。

理樹「そば屋・・・?」

そこは、そば屋らしき店だった。

雰囲気が、いかにも和風で、入口の所にはのれんがかかっていた。

そして、中からそばつゆの匂いが出ていた。

ただ、少し妙なのが、その店の名前だ。

その店の名前というのが・・・、

『じゃぱに〜すそば〜すとあ〜 だとおもいま〜す』

だったのである。

理樹「何この店!?店の名前がおかしいでしょ!そば屋じゃないの!?」

いろいろ不安は抱えつつも、もしかしたらここにクドがいるのではないかと思った理樹は、

そのいかにも怪しい店の中へと入って行った。



鈴「で、それはどういうことだ?」

先ほど、恭介よりすべてのことを聞いた鈴は、恭介に対して質問攻めをしていた。

恭介「どういうことって言われても、そういうこととしか言いようがないな」

鈴「なんでクドがきょーすけにそんなことを相談したんだ!」

恭介「そりゃ、俺が頼りになるからじゃねぇのか?」

そう恭介が言うと、鈴は突然俯いて、小さな声で呟いた。

鈴「クド、馬鹿兄貴には気をつけろよ・・・喰われるぞ」

恭介「おいおい鈴、それはどういうことだよ!!」

その呟きが聞こえたらしい恭介は、盛大な突っ込みを鈴に入れる。

鈴「言葉の通りだ」

鈴はそっけなく恭介の言葉に対して答えた。

恭介「と、とにかくだ。鈴にもこれから協力してもらうぞ」

鈴「え?私は何をするんだ?」

すると、恭介の口元が、心なしか緩んだようにも見え、鈴の耳元で、何かを囁いた。

恭介「・・・」

鈴「!!」

(ゲシッ!)

その言葉を聞いた鈴は、恭介に対してハイキックを喰らわした。

恭介「・・・何するんだよ、鈴」

直撃したはずの恭介が、まるで動じる様子もなくそう答えた。

鈴「そんな恥ずかしいことできるか、ボケー!!」

(ゲシッ!)

恭介「げふっ!」

何故か鈴は、恭介に2発目を喰らわした。

もろに喰らった恭介は、今度ばかりは悶絶した。

だが、一瞬だった。

その場に倒れていたかと思えば、すぐに立ち上がって、

恭介「理樹を取られてもいいのか!!」

などと言い始めた。

鈴「は?」

いきなりの恭介の言葉に、鈴は間抜けた声を出してしまう。

恭介「こういう時こそ、能美に協力しつつ、自分だって理樹のことを・・・」

鈴「べ、別に私は、理樹がどうなろうと、かまわない、し・・・」

恭介の言葉の途中で鈴は、動揺しながらそんな言葉を言い放った。

恭介「ん?じゃあ、クドや小毬や来ヶ谷や西園、三枝に二木とかに、理樹を取られても

   いいのか?」

鈴「それは・・・ってちょっと待て。何でかなたの名前まで入っているんだ?」

恭介「いや、なんとなくだ」

恭介の言った候補の中に、佳奈多の名前も入っていたが、それは間違いではなかった。

鈴「しかし、あいつらに理樹を取られるのは嫌だ」

恭介「だろ?だったら、今すぐここに行ってこい」

恭介は鈴に、一枚の紙を渡した。

鈴「・・・何だ?これは」

恭介「地図だ」

その紙は、地図だった。

商店街の地図であった。

そして、その地図には、目的地らしき所が丸く囲ってあった。

そして、その場所というのが、あの店、つまりは・・・、

『じゃぱに〜すそば〜すとあ〜 だとおもいま〜す』

であった。