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「見ないで・・・」



 直枝さんが急に意識を失ったかのように倒れた。



 その様子を美鳥はただ見ていた



 変わりたくない



 きっと、こんなことを思うことは



 傲慢極まりないものなのでしょう



 それでも、わかっていても



 この気持ちはどうしようもないのです



 小さい頃から・・・ずっと心に残っていたこと。



 ・・・誰にも認められなかった「美鳥」の存在を・・・



 そんなことを・・・ずっと思っていたのに



 どうして、いつ何処で変わってしまったのでしょう















   神様、もう少しだけ・・・ / 蒼泉市役所















「・・ふぅ・・・」

恭介さんが持ってきた短歌の応募用紙に何も記述することが出来ずに、私は味気ない色彩のシャープペンシルを一度机の上に置いた。
外は校則によって定められている外出可能な時刻を回っていた為か人通りは無く、時々聞こえる猫の鳴き声が空しく響くだけだった。
時刻はもう十一時を回っていた。漆黒を基調とした宵闇の空に淡く儚げなほど白く輝く三日月のような有明月は、無数に輝く星々と共に
時折フッっと寮の前を通り過ぎる猫の背中を照らし続けている。
部屋は虚しくなるほど静かだ。
同じルームメイトである能美さんは就寝時刻が早いためもう床に就いて1時間ほどになる。
就寝の妨げになら無いようにと部屋の電灯を消しているため机のスタンドライトで照らされた私の周囲以外は外の宵闇と同じ位に漆黒に包まれ、
さらになるべく物音を出さないようにと心掛けているため部屋には綺麗な等間隔で無機質な音を鳴らし続ける時計の音だけが空しく響いていた・・・。
美魚は何を思ったのか、もう一度静かに部屋に取り付けられた窓のカーテンをシャッとそれぞれ両端に寄せ窓を開け放した。
乾いたような涼しげな夜風が部屋に入り込んできた。・・・また夜空を見る。
綺麗だった。きっといつ見ても綺麗以外形容のしがたい美しい夜空だ。・・・でも


 ・・・綺麗・・・  しかし ただ それだけです・・・


きっと・・・この夜空はいつ見ていても・・・虚しい、そう思っただろう。
手を伸ばす。満天の星々に囲まれた、白い有明月に手を伸ばす。目の前にある欠けた月を手に入れようともがく。
・・・でも命一杯背伸びしようと月には手は届くはずは無かった。手を伸ばせば簡単に届くような月なのに、どうしてもこんなに遠くにあるのだろう。

「・・・やっぱり、模造品の月でも・・・手は届きませんか・・・」

ゆっくりと有明月に向かって伸び続けていた右手を、そっと戻した。
昔から、手に入れたかったものは・・・。本当に欲しいと思った物は、いつでも手が届かなかった。
学習机で本を読む私から見る教室で戯れる同級生達は・・・手を伸ばせば直ぐ傍にあるのに、この有明月の様に・・・とても遠くて、届かなくて・・・。


 たった一人で月を手にしようと目一杯もがいて・・・

  
 いつしか、自分は月には届かないと知って諦めてしまって・・・


 ・・・一人、絶望してしまって・・・


 でも、そんな時だった・・・彼女の・・・


「わたし、西園美鳥。よろしくね」


 美鳥の声を聞いたのは


窓を閉じる。私は何をするでもなくもう一度学習机に向かった。
そして、ふと思い立ち私は机の上にあるお気に入りの見慣れた明治〜昭和初期の歌人・若山牧水の歌集の文庫本手に取った。
何度も開かれ、癖のついたページを開きその表面にそっと触れる。・・・感触も匂いも、
大好きな句の所で見開くようになっているその癖でさえも・・・きっと相違点は無いに等しいと思う。それは、恐らくこの机も、人も、夜空も全て限りなく

本物に近い・・・模造品なのでしょう。

思えば・・・望めば何でも手に入ってしまう。
そんな、完璧で理想的な・・・・悲しく色褪せた、狂った世界。
でも、そんな世界でもいいと思った。
たとえどんな狂った世界でも、最後の時間をこうやって楽しく過ごせた私は少なからず幸せだと思う。
そんな中でまだ望むなんていうことはただの傲慢だ。
だから、私は此処で・・・この世界で。
私が小さい頃から・・・ずっと心に残っていたこと。



「美鳥ちゃんはどこへいったか知ってる?」

「美鳥ちゃんって誰?・・・知らない」



 ・・・誰にも認められなかった「美鳥」の存在を・・・


 ・・・私にさえも認められなかった「美鳥」の存在を・・・


 美鳥への・・・妹への贖罪を、この世界で果たそうと思った。


 美鳥に、一人の少女としてせめてこの世界で幸せに生きて欲しかった。


 ・・・・西園美魚・・・いや西園美鳥として・・・・・。


 幸せに生きて欲しい


 私の願いはただそれだけのはずでした・・・・


 気が付けば私は・・・


 なのに、いつからか、私は


 直枝さんに・・・惹かれていっていた


 その夢を願わなくなった


 生まれて初めて人を好きになった


 消えたくないと思った


 どうしようもない気持ちがこみ上げてきた


 変わりたくないと願った


 別れるという言葉が酷く嫌に感じられた


 それでも無情な秒針は


 ずっと一緒にいたかった


 無機質で虚しい音と共に


 貴方を・・・ずっと好きでいたかった


 刻一刻と時を告げる


 私はペンをとった





約束の時間が近づく





−せめて別れてしまうのならば−





別れの時間が迫る





−私の思いを、書き記そう−





後悔からか恐怖からか





−私が消え去った跡に−





それとも別離の悲しみからか





−彼に見て欲しい−





どうしようもないほど





−この記憶が、一緒にすごした時間が−





とめどなく、ぽろぽろと





−彼から全て消え去ってしまわぬように−





涙が頬を伝っていった





−私達が過ごしたあの時間は−





涙を裾で拭っても





−あの騒々くて・・・楽しかった日々は−





いつまでも涙が溢れてきた





−確かにあったんだってことを−





涙で前が滲む





−……そして……−





やがて文字が見えなくなる





−きっと……そのときには隣には居ないけど−





私は声を殺して泣いた





−貴方を愛した西園美魚は……−















 『 風に乗り  白い翼で  君と行く
    青の狭間の  常夏の島
                西園美魚 』















−確かに、貴方の隣に居たんだってことを−



「・・・変わり・・・たく・・ない・・で・・す・・・」



 きっと、こんなことを思うことは



 傲慢極まりないものなのでしょう



 それでも、わかっていても



 この気持ちはどうしようもないのです



 小さい頃から・・・ずっと心に残っていたこと。




 ・・・誰にも認められなかった「美鳥」の存在を・・・



 そんなことを・・・ずっと思っていたのに



 どうして、いつ何処で変わってしまったのでしょう



「西園さん・・・だよね?」
あなたと出会ったあの日から


「そんな風に笑えるなんて知らなかった」
一緒に本を探してくれたあの日から


「だって、僕は西園さんのことが・・・」
いつも中庭に来てくれたあの日から


「僕が日傘になってあげるよ」
リトルバスターズに誘ってくれたあの日から



 きっと

 どうして、いつ何処でなんかじゃなくて

 貴方と共に過ごした

 いくつものかけがえの無い時間が

 いつの間にか、私を変えてくれた

 私に「生きたい」と思わせてくれた



 もし出来ることなら、この世界でではなく、生きてこの想いをしたかった

 この世界から逃げ出してしまいたかった

 貴方と共に想いを馳せた・・・あの青の狭間の常夏の島へ

 ふわりと白い紙飛行機の翼を風に乗せ、貴方と共に何処までも遠くへ・・・

 何処までも・・・・飛んでいってしまえたら・・・・





そんな想いを馳せて私は白い有明月の光に照らされ、声を殺して泣き続ける。
机の上の時計は、もう日付が変わっていることを示していた。
今日は、私が西園美魚の存在を美鳥に渡す約束の日。・・・直枝さんとのお別れの日・・・
別れの時間は無機質な音と共に刻一刻と迫る。

「・・・・わか・・・れ・・たく・・・ない・・・・。嫌・・・そんな・・・の・・・嫌ぁ・・・」

いまさらになって後悔がとめどなく溢れてきた。
しかし私がどれだけ泣いて懇願しようと、涙と秒針は止まることはなかった。
だから、私は願う。どうしようもないことも、もう諦めなくちゃいけないのも分かっている。



 でも、もう絶望はしない


たとえ月には手は届かないと知ったって


私は、最後まで目一杯、月にこの手を伸ばし続ける


だから


 せめて・・・もしこの想いがこの世界に私達をいざなってくれた神様に


 この声が聞こえるのならば


この世界での私の願い、二つ目になりますが


聞いていただけますか?


どうか・・・どうか


騒々しくて楽しかった日常を  


私の大切な人達とのこの時間を


大好きな人との温かくて、優しい時間を





 どうか










 どうか










 神様、もう少しだけ……
 〜Fin〜




























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後書き/
どうも、初心者系物書き 蒼泉 市役所 (あおいずみ しやくしょ)です。
いやいや、2作目ですよ2作目!!
正直びっくりです。これも皆様の応援と神主あんぱんさんの内角低めいいっぱいをつくような的確な助言の賜物です。
今後もどうか海よりも広いそのお心で、お見守りください。
orz (深々・・・

さて、内容についてですがいかがだったでしょうか?
・・・・えっ?聞いたことのある題名ですって?
歴代で最も長いキスシーンが挿入されているドラマの題名に似てるですって?
細かく言えば、1998年7月7日〜9月22日にフジテレビで放送したテレビドラマ。
ドラマ界では珍しく、2話以降徐々に視聴率を上げ始めフジテレビ火曜9時枠の連続ドラマとしては平均視聴率22.6%、
最終回視聴率28.3%を記録する大ヒットを記録した名ドラマみたいな題名ですって?


・・・・・・・えぇ!でしょうね!! 
だって何かアイデアが欲しくてレンタルビデオ屋を徘徊していた時に目にはいった題名ですから(ぉ


まぁそれはさておき!前回が長編ものだったこともあって(あれ総合で440kb以上ありましたから・・・)
今回は短編でスチャっと終わらせようとしたんですが、

まぁ、まとめられないことで!

せっかくMicrosoft word 二つ立てて使っているのにあれやこれやと文を書き込むため、まぁメモ意味なし・・っと。
後キャラクターと状況についてですが、状況は西園ルートのあの美鳥と入れ替わる前夜を情景にさせていただきました。
お陰で勝手な推測等が飛び交っていましたがそこは二次創作!
まぁご愛嬌ということで・・・

キャラクターについては、女性の視点でものを書くってのは難しいものですね。
そう考えると「土佐日記」はすばらしい良作ですね。・・・はっ!じゃあネカマは最強じゃ・・・?・・・などと思う今日この頃・・。
しかも、リトバスも借り物だった上、期間が一週間ぐらいだったため、まぁセリフとか覚えていなくてですね・・・
情景も曖昧で、もしかしたら原作無視したような設定になっているかもしれません。指摘よろしくお願いします。
季節とか半端無く間違ってますからね。(最初、初夏のどうのこうのとか言ってましたから・・・)

中盤に、両端に分けて書いていた点などの無駄な工夫は読みづらかったでしょうか?
実質一つの風景に二つの文が連立していることになりますが、どうでしたか?
ちなみに作者はいたく気に入っております。・・・・姉御ルートみたいでいいかナ〜?と思ってます。

まぁ色々と回りくどい文になりましたが、もし宜しければ、そろそろ受験の迫っている厨房の必死な文を長い目で見てやってください・・・。


この蒼泉市役所もそろそろ閉館の時刻になりました。
この作品を読んでくれた皆様、本当にありがとうございました
 

See you again また出会うそのときまで・・・・