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 思い浮かべたのは、強張った面持ちで想いを打ち明けた彼女の顔だった。
 夕焼けに染められた世界。
 長い髪を揺らして。
 唇を噛んで。
 目の端に涙を浮かべながら――


 …ちゃりーん、という音がして、それは崩れ去った。




       "Because of Love."   Side K / First Half




「♪〜…」
 控えめで可愛らしい鼻歌が、台所の方から流れていた。
 それに、空っぽのお腹を刺激する良い香りも乗っかっている。
「…………んぅ……」
 まだ寝ぼけている杏は、わけもなく唸りながらその方向へと向かってみた。
「ふふっ……」
 幸せがこぼれ落ちたような笑い。
 テーブルの上には、完成した品と、ふたりぶんの弁当箱があがっていた。
「あ、お姉ちゃん、おはよう」
「んん………」
 寝ぼけ眼をごしごししながらの返事ともつかないうめきに、椋はくすくすと笑った。
それからあ、と何かに気づいたように、
「お姉ちゃん、お弁当間に合う? おべんとばこ出してくれたら…三人分はあるから」
 伺うように椋が申し出る。
 昨日、帰ってきた姉がえらく疲れたような様子だったのを見て、あらかじめ三人分のおかずを作っていたのだ。
「ん…だいじょうぶよ」
「でも、お姉ちゃん、時間が…」
「大丈夫よ」
 返事が固くなる。
 はっとした椋は、姉がいつの間にか目を覚ましていることに気づいた。
「…あ、あはは。ほら、朋也にふたりぶん食べてもらいなさいよ」
「で、でも…」
「あんたのならちゃんと食べてくれるから――」
「そうじゃなくて――お姉ちゃん、無理してない?」
 じっ、と姉を注視する椋。
「無理なんて……してないわよ」
 少し俯いた頭を、杏は持ち上げ直した。
「ただ…えっと、ほら、ただ…あたしもつくったげたいのよ。
 ほら…陽平に」
 後頭部をかいて、やーねぇ、言わせないでよ、と笑う。
「……」
それでも、疑わしげに杏を見つめていた椋だったが、
「うん、わかったよ、お姉ちゃん…。 遅刻しないように気をつけてね」
 結局そう言って、弁当を詰めるのに取り掛かった。
「あ…そうそう、椋」
「え? どうしたの?」
「あのね……今日、父さんも母さんも帰ってこないじゃない?」
「う、うん」
 そのことは無論椋も承知していたことだが、いささか急な話題に少々戸惑う。
 が、次の一言でそんなものは吹っ飛んでしまった。
「だから、あたし今晩帰らないから」
 ……………………………。
「え、ええ――っ!?」
「わっ…。近所迷惑よ、椋」
「だっ、だだだだって、お姉ちゃん…」
「とにかく、そういうことよ。だからね――」
 急に神妙な顔つきになる杏。
 思わず椋は次の言葉を待ってしまう。
「――この家は使ってよし」
「〜〜〜?!」
 その意味を察して、ぼんと一気に赤くなる椋。
 その様子を笑いながら、杏はスリッパをぺたぺたと言わせて洗面所へと去っていった。
「…………
 久しぶりに………朋也くんと………」
 後には茹り続ける椋と、作者と同様に湯気を立ち昇らせる弁当が残った。



 なんとなしに浮かんでいる太陽が、程よい感じで照っていた。
「ふあ…」
 朋也はあくびをしながら背筋を伸ばした。
 せっかく伸ばした背筋を曲げて、のろのろと歩き出す。
 いかにも「学校なんてかったるいです」と全身主張しているような男だった。
 もっとも、彼が以前のように遅刻して登校しないのは、学校へ行く大きな意義もまた持ち合わせているからであった。
 ぱたぱたぱた…
「…ん」
 その「意義」とやらが近づく足音が微かに聞こえて、朋也はさり気なく歩調を緩めた。
「朋也くん、おはようございます」
 振り返ると案の定、小さな花のような笑顔で椋が居た。
 「おう。おはよう、椋」
 そのまま、自然と肩を並べて歩き出す。
「…姉は相変わらず寝坊か」
 苦笑しながら朋也が尋ねた。
「え、えっと…そうです」
 フォローできずに、困ったように笑う椋は可愛いかった。
 なでなで。
「と、朋也くん…」
「ほんで、おまえは相変わらず姉思いだな」
「……」
 椋は思いがけず、といった様子できょとん、としたあと、赤い顔ではにかんだ。
「あ…けど、今朝は張り切ってました」
「何だ、ついに辞書投げ世界新でも目指すのか」
「そうじゃないです…
 お姉ちゃん、陽平さんにおべんとつくってあげるっていってました」
「はぁ…長続きするなぁ…」
 朋也は感心半分、呆れ半分といった様子で唸った。
 正直言って、コウテイペンギンがバレルロールしながら空を飛ぶくらい意外だったのだが、杏と陽平がくっついたのである。
 杏とのキス未遂――というかなんというか――の目撃に端を発した、朋也と杏とのうわさも、どこかしこで陽平にべったりな杏のおかげて、急速に薄まりつつあった。
 その杏の彼女としての甲斐甲斐しさと言ったら――朋也が見た目以外で初めて、椋と双子の姉妹なのだということを改めて思わされたぐらいである。
「ところで、杏の話はしてるが…おまえは?」
「え? あ、はい。もちろんつくってきましたよ」
「そうか。いつもありがとうな」
 辺りに人気がないのをいいことに、朋也は素早く椋の頬にくちづけた。
「わ…」
 ぴたっ、と立ち止まる。
 目をまるくしたまま、その頬にそっと触れてみる椋。
 恥ずかしがるかと思いきや、椋は朋也を見つめてえへへと笑った。
「……」
 …今度は朋也が恥ずかしがる番だった。



― § ―



 ぱたん。
 杏は、しんとした空気に気兼ねして、静かにドアを閉めた。
 人気はない。
 とっくに始業時間を過ぎた学生寮の中に、そんなものがあるはずはなかった。
「ぐ――……」
 目の前のコイツは別として。
(相変わらず汚い部屋…)
 何度掃除してあげてもすぐ散らかされてしまう部屋に、杏はため息をついた。
 かちゃっ。
 後ろ手に鍵を閉めた。
 部屋に上がりこむと、適当な所に鞄を置く。
「うへへぇ……」
 だらしない寝顔を見てもう一度ため息をつくと、杏はこの部屋の住人…陽平の上の布団を剥ぎ取った。
「ぐ――……」
 無論、この程度では起きない。
 しかし杏がいつも通り彼を起こすにはどうしても必要な手順だった。
「………」
 何度回を重ねても、躊躇いは無論あった。
ただ、これは、陽平に頼まれたことなのだから…
 彼氏である、陽平に……
 杏は自分にそう言い聞かせると、きっと陽平の下腹部――朝なので布地が盛り上がっている――を睨みつけた。
 ごそごそ…
 ベッドに乗ってその前に座ると、そっと手を伸ばす。
「……」
 パジャマと――そしてパンツまでもを脱がす。
 当然だが、陽平の陰茎はその姿を晒すことになる。
「ん……」
 杏はそれにそっと手を添えると、少しだけきゅっと握る。
「うほっ…うう〜ん…」
 ぴくぴく、と反応が返ってきた。
「はぁ……」
 最後にもう一度、深く溜め息をつくと、杏はそのモノにそろそろと舌を伸ばした。
 ぴちゃ…
「ふん…ふぁ……」
 れろれろと亀頭を舐めまわす合間に吐息が漏れた。
 にちゃにちゃ…
 杏のぽてっとした唇が、亀頭をあまくはんでゆく。
 ぴくぴくと脈打つ先からこぼれ落ちてきた先走りが、それに巻き込まれていった。
 杏がことさらに唾液を分泌するせいで、陽平の陰茎はてらてらと光沢を発するまでになっていた。
「ん……ふぅ」
 杏は一端、舌を引っ込めた。
 唾を何度か飲み込むと、するすると飲み込むように陰茎を口に含む。
 じゅるるるるるっ…!
 そして、そのまま、強烈に吸い上げた。
 びくん、と脈動が一際高まる。
「ん――っ…」
 苦しげに吐息を漏らしながらモノを引き抜く杏。
 その際にも、裏筋のある線にそって舌を這わせるのを忘れない。
 おそらく本人よりも――杏は陽平の陰茎について知悉していた。
「んはっ…」
 ぽん、と音が立ちそうな様子で口と性器の接合が外れた。勢いで陽平のモノはぷるぷるとゆれている。
「んん…」
 杏は唾液でべとべとになった口元を拭うと、微振動する陰茎を掴み、上下にしごきたてた。
 ぴちゃ…
 その陰茎に頬を寄せるように近づき、手と同じように上下へと舌を這わせる。
 れろれろ…
 上昇・下降の動きをときどき切り替え、ねぶりまわしたりもする。
「ふぐっ…」
 杏は再び亀頭を口内に含んだ。
 じゅっぱ、じゅぱっ…
 陰茎をしごく役目を返された唇が、どろどろの陰茎と擦過してこぽこぽ泡を立てる。
「んおん…んああ…」
 自分の口腔を撫でまわすようにぐるぐると舌を動かした。
 無論それは亀頭の周りも撫でまわすことになる。
 びくびく、と脈動が増大していた。そろそろかな、と思う。
 さすがにもう目は覚めているだろうが、起きださないということは…。
 杏はやるべきことを頭の中で確認すると、フェラチオをさらに加速させた。
 じゅぶっ! じゅぶっ! じゅぶっ!
「んっ、んっ、んん――っ!」
 勢いよく根元まで咥え込んだところで、終わりが来た。
 びゅるるるっ!
「んぐううっ!」
 朝っぱらからかなりの勢い。のど奥に熱いものを叩きつけられた杏はあわてて口を戻した。
 びゅくびゅくっ、びゅくっ…
「んく、んくっ…」
 こくこく、と喉を鳴らして、杏は与えられる精液を嚥下してゆく。
 しかし、彼女は何故か飲み込むのを途中で止めていた。
 びゅるる…
 じょじょに、射精が沈静化してゆく。
 落着いたかな、と杏が思うと、その精液の持ち主がのそのそと置きだした。
「ふぁ〜…」
 陽平はひとつあくびをすると、じっと杏の言葉を待った。
「んぁ…」
 杏は慎重に口を開いた。
 つつ…と、その端から白くにごった線が生まれ、杏の顎をつたって落ちていった。
「ふぐ…」
 陽平はその様子を見てにやにやと笑っている。
 杏の口腔は、まるで精液の貯水池のような様相を呈していた。
 目一杯開けた彼女の口は、どろどろの精液がたぷたぷと揺れて満たされている。
「ふぁ……ほふぁほう……ほうふぇい……」
 おそらくはおはよう陽平、と言いたかったのだろうが、それはまるで叶っていない。
 それでも陽平は満足そうに頷いた。
「へへ、いい眺めだねぇ…。あ、もういいよ」
 気楽な調子で告げる陽平の言葉を合図に、杏は口を閉じた。
 目も閉じて、その精液をゆっくりと飲み下していく。
 こくこく…
「ん、はっ……ふぅ…」
 額の汗を拭い、荒く息をつく杏。
 そして、乱れたスカートを直しながら、笑みを作った。
「…さ、学校に行きましょ、陽平」



― § ―



 からん…ころころ。
 朋也は思わずシャーペンを机の上に投げ出していた。
 はぁ、とため息をついて面を上げる。
 黒板にはでかでかと「自習」と書いてあった。
「…朋也くん?」
 対照的に軽快に筆を走らせていた椋が、朋也の様子に気づいて顔を上げた。
 どうかしました? と小鳥のように首を傾げる。
「うー…わっかんねぇ」
「どこですか?」
「ん」
 ちょんちょん、と自分の手元のプリントをつつく。
「何回も確かめたんだけどさ…全然計算あわねぇ」
 はぁ…、と、朋也は本当に疲れたようなため息をついた。
 その脇には、くしゃくしゃになった計算用紙。
 確かに検算やら試し書きらしき殴り書きがびっしりとそれを埋めていて、椋は嬉しくなってしまう。
「がんばりましたね」
「しかし、実らん努力だぞ、こりゃ…」
「そんなこと、ないですよ。朋也君はすごく頑張れる人だって、私、凄く嬉しくなります」
 含みも屈託もなく微笑む椋に、朋也はまともに目を合わせられないのだった。
「そっかよ…」
「はい。そうです」
 照れてそっぽをむく朋也を見て笑みを深めながら、椋は朋也が苦戦しているらしい問題を覗きこんだ。
 そして次に、朋也の解答過程を見る。
 苦戦の理由に椋は気づいた。
「朋也くん、これは断熱自由膨張なんですよ」
「は…?」
 訊いたこともないタームに目をしばたたかせる朋也。
「なんだ、その"自由"ってのは…」
「はい。えっと…朋也くんは、この変化を…断熱膨張として計算してますよね。
 ここの…ΔU=Wのところです」
「ああ。だってシリンダとかピストンは熱を通さない、ってしてあるだろ?
 だったらΔU=Q+WのQはゼロでいいんじゃ…」
「はい、それはいいんです。
 ただ、ここではピストンの向こう側が真空ですよね? シリンダとピストンは理想的で摩擦しないとされてますから…Wもゼロなんです」
「…?」
「気体は膨張してます。けど、その向こう側が真空ですから、押し返してくるものはこの中にいませんよね? 膨張してる間も、気体には何ら外力が働いていないんです」
「あー…そう言われりゃそうか。てことは、力がゼロだから…」
「仕事もゼロ、です」
「じゃあ何だ、気体の内部エネルギーは変化してねーのか」
「そういうことになります」
「そうか、そういうことか…。ちくしょー、何か汚ねぇ手だな、問題作ったやつめ」
「あはは…」
 少し過激な朋也の愚痴に苦笑した椋は、ふと背後の気配に気づいて振り返った。
「あ…春原さん」
 陽平が手に鞄を持って立っていた。
「お、やっと来たかバカ」
「と、朋也くんっ…あんまりひどいこと言っちゃだめです」
「だって遅刻だぞ、こいつ」
「うぅ…遅刻は確かにダメですけど…」
 陽平はそんなやり取りにも一切絡んでこなかった。
 ただ、酸欠の魚のように口をぱくぱくさせている。
「お前、どうしたんだ?」
「あ…」
「"あ"?」
「ありえないよ……岡崎が………岡崎がっ……」
 まるで亡霊でも目撃してしまったかのように後ずさり…
「むちゃくちゃ頭いい会話をしてるなんてぇ――――っ!」
 目を剥いた。
「自習中だそ、静かにしろヘタレ」
 椅子の角で殴り倒してやるべき状況だと朋也は思ったが、椋がいたので自粛しておく。
「さてと…で、椋。内部エネルギーが変わらないってことは、こいつ、膨らんでるくせに温度下がんねぇのか」
 で、あっさりと陽平を流した。
「あ…春原くん……席をお借りしてます…」
 お人よしの椋はそうはいかないようで、朋也の隣の席――つまり陽平の席だ――を引っ張ってきてくっついているこの状態を見ておろおろとしている。
「へっ? あ、ああ、別にいいよ。自習なら僕、他ん所行くから」
 鞄だけを机の脇にかける。
「じゃあねっ、岡崎。勉強エンジョイしなよっ」
「うわっ、そんなこと言わないでくれ…。お前にそう言われるとシャーペンすら持てないほどやる気が失せる」
「アンタ、ひどいっすね」
 若干ヘコみながら、陽平は再び廊下へ出て行った。
「ほ…他のところって…あの…」
「さあな…空き教室とか資料室とか。場所には困らんだろ」
「さ、さぼり…ですか?」
「まぁそうじゃねえかな」
「………」
 悲しげに顔を伏せてしまう椋。
 その表情に朋也はとりあえずあのヘタレの顔面を一発、と心の中でカウントした。
「大丈夫だって。あいつにも、叱ってくれる委員長がいるだろ? ま、お前ほどは真面目じゃねえけどさ」
「はい…そうですね」
 朋也の諭しに笑顔を浮かべる椋。
 だが朋也は、それでも椋が浮かない気持ちを抱いているのに気づいていた。



― § ―



 放課後。
 昇降口へ向かう廊下を歩きながら杏は考えていた。
 原因はひとつしかなかった。
 はぁ、とため息をつく。
 こうして杏が昇降口へ向かっているのは、体育倉庫に机と椅子を取りに行くためであった。
 掃除当番が間違えて、杏の席を片付けてしまったらしい(?)。
 まったくわけがわからない出来事だが、その結果が体育倉庫へと行くこととなれば、杏にはひとつ原因に心当たりがあった。
 昇降口に着く。
「もぅ……夜だってするのに…」
 下足を外履きに換えてから、杏は体育倉庫へと向かった。



 がしゃん――…
 後ろ手に鉄製の引き戸を閉める。
 力を込めて確かめてみると、いつも通り何故か開かなくなっていた。
「ふぅ…お待たせ」
「へへっ、待ちくたびれちゃったよ」
 もう馴染んだもので、杏はマットの近くまで行き、手早く制服を脱ぎ始める。
 下着も外して、杏は生まれたままの姿になった。
「うひゃー…」
 視線がくすぐったそうに身をよじる杏。
 陽平が見つめているのは彼女の秘所であった。
 ぱっくりとした割れ目がはっきりとうかがえるのは、そこを隠す陰毛が処理されているからであった。
「うんうん、ホントに剃ってあるねぇ」
「そ、そうよ…」
 羞恥に杏は頬を染める。
「杏ってさ、何でもお願い訊いてくれるようになったよね」
「当たり前でしょ、わたしは…アンタの彼女なんだから」
 俯きがちにぼそぼそと呟く。
 故に彼女は見逃した。陽平の顔が一瞬強張ったのを。
「へへ、そうかぁ」
 陽平はすぐに相好を崩した。
「そうよ…」
 熱っぽい視線。
 注いだまま、陽平にしなだれかかる。
「んふ…」
 そのまま、唇を合わせた。
「んっ…ふむっ…」
 杏はちろちろと舌を伸ばして陽平の口腔を探索した。
 舌先で向こうの舌の付け根をつついてやると、ぴくんと体が跳ねる。
 じゅる、ちゅっぷ…
「んはぁ…」
 杏がいったん舌を引いた。その拍子に漏れた吐息のなんと甘いことか。
 陶酔している陽平に構わず杏は攻めを再会した。
「んるっ……はむっ…はん、はぁっ…」
 相手の口を食べるようにはんで、角度を変えながら舌を押し込んでいく。
「んむむっ……んあっ…」
 じゅるるっ…
 互いの口腔を隅から隅まで探索していく。
 特に杏は甲斐甲斐しく舌を動かし、口の中のあらゆる所を愛撫していった。
「んはあぁ…」
 艶かしく吐息を吐きながら、惜しげもなくそのスレンダーな肢体を陽平に押し付ける。
 長い髪がゆらゆらと揺れ、小さな窓から差し込む外界の光を透かしていた。
 後光を背負った女神が、妖しく微笑んで唇を求める。
 陽平のモノは着実にいきり立っていった。
「はぁっ…はあっ…」
 杏は半ば乱暴に舌を押し付けた。高まってきている、というメッセージ。
 経験を重ねた甲斐か、陽平は諒解して彼女の割れ目にそっと指を沿わせた。
 ちゅぷ…
「ひぁっ!」
 ぴくん、と杏は跳ねた。
 彼女の秘所は既に湿り気を帯びていた。
 妖艶な女神が少女に戻り、初々しく快感に身を震わせる。
 じー……
「ああっ……、…?」
 微かな擦過音に気づく杏。
 秘所への慰めが途切れていたので、何だろうと思考を働かせ始める。
 しかし、その答えはすぐに返ってきた。
 ずぶううっ!
「ひああああっ――!」
 絶叫と呼べる嬌声が上がった。
「うぅ……はぁはぁ……」
 陽平はたまらずジッパーを下ろし、その陰茎をすかさず杏に挿入していたのだ。
「ぃ…あっ…」
 突き上げられたままの杏は、ふらふらとすぐ後の跳び箱に寄りかかった。
「そう…それでいいよっ…」
 手助けとでも言うわんばかりに、陽平がさらに身を押し込んだ。
 ずぶずぶすぶ…!
「あっ、ああ、あっ」
 跳び箱と陽平に挟まれて、杏の秘所がするすると陰茎を受け入れていく。
「あ、はっ、よう…へいっ、いきなり、すぎっ…」
「へへっ、そんな嬉しそうな声で言われてもねぇ…何のことだかよく説明してくれよっ」
 ずぶっ!
「あうんっ…! …だ、だから、深過ぎっ、はっ…」
「だから、何が深いんだっての」
 にやにやと笑いながら、それ以上の進入はせずぐにゅぐにゅと陰茎を回転させる陽平。
 生じる隙間からぽたぽたと愛液が滴り落ちた。
「だからあっ! 陽平のおちんちんがっ、深い…ああああっ!!」
 ずぶっ! ずぶっ! ずちゅうううっ!
 杏が言い終わるか否かに最奥まで突き入れると、勢いよく引き抜いてもう一度押し込んだ。
「うあっ、ひぎ…っ、はあっ! ようへ、くるし…」
 じゅぶっ! ずんっ! ずぶうっ!
「はあっ、はあっ!」
「うあああんッ! 駄目、駄目だってば…ああっ! ふあっ、ああんっ!」
 もはや陽平は聞く耳を持たなかった。
 空気と、そして快感の逃げ道を求めて激しく喘ぐ杏は、結果自らの膣内をぐいぐいと締め付けていた。
 陽平はそれを求めて陰茎の出入りをますます加速させた。
「くうううっ!」
 どぴゅっ! どぴゅっ、どぴゅ、どぴゅぅ――――!!
「ふあああああああっ――!!」
 びくびくと、杏の深奥で、陽平は精を解き放った。
「あっ、ああっ、あう…。うぁ…」
 どろどろとした熱流が、下腹部を焼き尽くしながら染み入ってくる。
「なか…あついぃ…」
 今なおぴく、ぴくと放出の仕上げをしている肉棒に膣内を震わせられて、杏はうわごとのように呟く。
 すると…
「うぅ…杏のその顔が…」
「えっ…」
 陽平のモノが、彼女に納まったままでその硬度を取り戻しつつあった。
「たまんないよっ、杏っ!」
 ぐじゅぐじゅ…! ずぶっ!
 陽平は再び注送を開始した。
 引き戻された陰茎をまた押し込むと、ぶちゅぶちゅと、放出したばかりの精液があふれ出てきた。
「ひあぁあっ! 陽平待って、イったばっかりでまだ…あああっ!」
 ずんっ! と、一際高く突き上げられる。
 半ば白目をむきながら、杏は結合を解かないまま貫かれ続けた。




 くっと引く手に力を込めてみると、抵抗は嘘のように消えていた。
 いつも通り陽平が、わけのわからない解呪をしたおかげだ。
 がらがら、と体育倉庫の扉を開けて、杏は外に出た。
 新鮮な空気が気持ちいい。何しろ、中はイカ臭い匂いで満ち満ちているのだ。
 いくら慣れようが、行為に集中しているのでもない限りきついものはきつい。
「帰るわよー」
「へっ? あ、ちょっ、ちょっと待った…」
 陽平はズボンを上げるのにまごついていた。
「もう…」
 腕を組んで呆れていた杏の背後から、すっと影が差した。
「ひいっ」
 中途半端にベルトを締めたまま、陽平が硬直する。
 浮かんだ考えは最悪の予想だった。
 恐る恐る振り返ると、予想は的中…そこにはユニフォームを着た男子生徒が立っていた。
 彼はサッカー部員だった。
「あ…」
 にやにやとほくそえんでいる目の前の男子に、青ざめる杏。
 見られた――。
「ずいぶんとお楽しみだったなぁ、春原」
「……は、はは」
 陽平は脂汗をだらだらと流しながら愛想笑いをする。
「ただよぉ、オレたちゃここに用があったんだよ」
「そうそう」
 斜に構えた彼の脇から、さらに他の部員が現れてきた。
「ボール取りに来てみりゃ、閉じこもってせっせと励んでる最中だったからよ」
「オメーに彼女が出来てあちこちで調子乗ってるのは訊いてたけどよ、こりゃ行き過ぎじゃねーか?」
 どんっ
 硬直してしまっている杏を突き飛ばして、ぞろぞろと部員たちは中へと入っていく。
「ひいいっ!」
「部員じゃなくなってもウチのジャマすんのかよ、テメーはよっ!」
「田舎帰れ、バァーカ!」
 ……! ………!!
 鈍い音がいくつか響いたと思ったら、あっさりと止む。
 陽平は昏倒させられ、無造作に床に打ち捨てられていた。
「ちょっ……ちょっとアンタたち! 何してんのよっ?!」
 杏は咄嗟にそう叫んでいた。
 彼女である自分が、陽平をかばわねばならないのだから。
「あぁ?」
 しかし、部員たちはまったく怯まなかった。
 寧ろ、じりじりと杏ににじり寄ってくる。凄んでいる者、にやにやしている者…
「そういうテメーはナニをしてたんだよ」
「聞こえてんぜー、声。陽平相手にあんあん喘いでるってのが笑えたけどよぉ、それでも勃っちまったぜ」
「……っ…」
 誤魔化しようもない。
「……誰にも言わないで。お願い」
 唇を噛み締めて、杏はその隙間から押し出すように言った。


          Be Continued to Second Half...